人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。「結婚相談所」 生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない。「空を飛ぶ夢をもう一度」 お前には、会社時代の力関係が染みついてるんだよ。「キャンピングカー」 夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしてると思ってるんだ。「ペットロス」 人を、運ぶ。人を、助けながら、運ぶ。何度も、何度も、そう繰り返した。「トラベルヘルパー」 ごく普通の人々に起こるごく普通な出来ことを、リアルな筆致で描き出した村上龍の新境地 個人があらわになったとき 家族との絆が必要になる 村上龍 近所のSさんが期限内だからと貸してくれた。 新聞連載の中編連作。 定年後の老いとともに訪れる、生活の難しさ。 まさに、我々の世代の普通の人々の話。 思い当たるふしが、どの話にも潜んでいて身につまされる。 各々、アールグレイ、炭酸水、プーアール茶など、飲み物が心を 落ち着かせるてだてとしてでてきて、おいしそうだ。 ・結婚相談所 ・空を飛ぶ夢をもう一度 ・キャンピングカー ・ペットロス ・トラベルヘルパー 結婚相談所に登場する男たちのありそうな風体やらクセに、中高年の 再婚の難しさを実感。 やはり離婚してる場合じゃない^^ でも、この話の主婦は熟年離婚を果たし、夫側からの未練に心揺れつつも ひとりで生きていく道を選ぶプロセスになっとく。 キャンピングカーは、定年後、妻との時間の誤差にようやく気づき心のバランスを崩していく夫、 妻は自分の時間を既に大切にしていて、夫のはいるすきはわずかしかない。 ペットロスは印象的で、夫婦の会話の行き違いに思わずニンマリしてしまう。 この話がいちばん心に残るかな?痛々しいまでにリアル。 夫のつっけんどんなもの言いにいつも傷ついていた妻。 自分の存在価値を疑問に思う上、 よその奥さんばかり褒めて、人様には愛想もいい夫。 子育てが終わって、そんな夫に希望を見いだせない妻は犬を飼う。 やがてその犬を失うときが来る。 そこで初めて分かり合えそうな夫婦。 そんな心の機微がうまく表現されて、共感出来ました。 『実際に、自分で人生のすべてを選択できる人なんていない』という結婚相談員のことばどおり、 普通の人々は選択肢が限られた中でがんばって生きていくしかないのです。 今までに前例のない難しい時代に突入している我が国。 親の世代を真似してても、まっとうには生きていけない。 そんな生きづらさを踏まえて、各々のストーリーに思わずドキッとするのでした。 村上龍は、『半島を出よ!』 以来。 あの話は独創的、強烈でスゴイと思ったけれど、 この話は普通のシニアの生きづらさを描いていて、思わずため息が出てしまいました。 村上龍ご自身は、普通の人ではないのに、よくリサーチした結果の本書だと思います。 女性の心情が、よくわかってるところがさすがと思いました。 小池栄子とともにでてる対談番組でも、イヤミなく個性を発揮してると思ってみてましたが、 限りなく透明に近いブルー以来、すごく好きな作品’半島を出よ’ に続き、 ファンとなってます。
by kimikitak
| 2013-09-12 20:09
| 本
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