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平成猿蟹合戦図

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新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、
すべての始まりだった。
長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、
冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、
韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、
秋田県大館に一人住む老婆…心優しき八人の主人公が、
少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える
“戦い”に挑んでゆく。
希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説



新聞の日曜日の書評は楽しみのひとつ。 
読書委員の小泉今日子
鎌倉古民家ドラマも終わり、しばらくぶりの
小泉書評、きょうは『きなりの雲』石田千著。 
いつも思う、彼女はとても書評が上手!女優で読書家、まっすぐで
読みやすい文章は、読む気にさせます。 
というわけで、この『平成猿蟹合戦図』もだいぶ前だけど
小泉書評を読んで、リクエストを出したのでした。
私は書評は書けないので、一言でいうと、まずまずのおもしろさでした。 
三幕からなるこの話、最初は「悪人」のように、どんどん暗い方向に行くのかと
心を痛め、八方塞がりにドキドキし、これは収束させられないのでは?という
懸念も三幕目は丸くまとめて落着。 吉田修一がおとぎ話と
言ってるように、途中からメルヘンぽさを感じ、悪人のようなハラハラ感は
消えてしまいました。
歌舞伎町という夜の街の底知れない不健康さと対照的な秋田大館市という
牧歌的な風景が、登場人物たちを明るく変化させていく様子が爽やかでした。 
秋田弁の表現が、また和みます。「...だびょん」というのは、よく使われるのでしょうか。
よく出てきました。 
登場人物は、どの人も素敵に変化していきますが、
なかでも秋田の96歳のサワおばあちゃんは、魅力的で、
このサワさんを、最後に悲しませないで欲しいと願いました。 
数々の興味のツボがちりばめられていて...たとえば、不正政治資金疑惑の
代議士先生はあの人かな?とか、渋谷から少し離れたところにある70年代
活躍した歌手のもちものだった一軒家の歌手とはあの人かな?などなど、
ところどころリアルでそそられ、楽しんで読んだのは確かです。
夜の歌舞伎町も学習になりました。
まずまずおもしろいというのは、途中から思いもかけない方向へいくのはいいけど
いき過ぎかな~、そんなうまくいくかな~とひねくれて読んだからです。
でも、
この話も映画になってもよいかと思いました。   
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by kimikitak | 2012-05-06 23:28 |

ばんば憑き

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湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。
不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、
五十年前の忌まわしい出来事だった…。
表題作「ばんば憑き」のほか、
『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、
『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、
宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。



アリスさんのレビューを見て、図書館にリクエスト。
妖怪というかもののけの話でしょうか。
しかもお江戸、どの話も、深いワケが潜んでいて、知りたくて
読み進まずにいられません。 
最初の『坊主の壺』
江戸の町に疫病、コロリが発生。おすくい小屋を立てて、人々を助ける商人重蔵。 
これは、コレラなんでしょうが、人がバタバタと死んでいく。
江戸の風物が目に浮かぶような描写にまず惹かれます。
掛け軸の壺の聖なる不思議な力、最後に謎があかされ、息がぬけない。
主人公、玉の輿のおつぎの強さ・あたたかさが魅力的。
この話、好きでした。
『お文の影』も好きでした。 
咎なくして死んだ幼子。これは現代にも通じる折檻。 
コンビュータ頭脳のおでこの活躍、そのキャラクターが魅力。 
読み応えがあって頭に残りそうなのが『討債鬼』
ハマりやすい私は、すぐさま与太話を持ちかける坊主、行然坊を
憎き嘘ワル坊主と決めつけましたが、深考塾の子供ら三人組の活躍で変わっていく
成り行きで、キャラクターも明らかに。 
そうでした、何事も、決めつけてはいけないのでした。 
この子どもらは、〈あんじゅう〉にも出てくるらしいので、読みたいです。
表題作の『ばんば憑き』立場の弱い婿、佐一郎とわがままな妻志津。
そのわがままっぷりがひどく、憎たらしい娘であることが判明。
老女との一夜で、将来がみえてきた佐一郎。 
かわいそうに。ばんばとは、強い恨みの念を抱いた亡者。
ばんばの生きてきた過去は強烈でした。 
最後の『野槌の墓』も印象的。
もののけに心があったらいけませんか?というお玉さん=化け猫。
人間のおぞましさが描かれてます。 
そうそう『博打眼』もありました。 
人が生贄になってできた博打眼
博打眼から人を助ける狛犬。
博打打ちを戒めているのかな? 
おもしろいです。 
どの話も内容が濃く人の世の業がよく現れていて、現代にも通じる教訓も潜んでいるような、
いい話でした。 
宮部みゆきを多くの方が絶賛するのもわかりました。
私自身は「理由」以来あまり読む気がしなかったのですが、この先は
読んでみようかな。 
読ませる文章、量産できるのはあふれる才能なのでしょうね。
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by kimikitak | 2012-04-28 11:04 |

花宵道中

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男に夢を見させるためだけに、生きておりんす。
叶わぬ恋を胸に秘め、抱いて抱かれる遊女たち。
驚愕のデビュー作。R-18文学賞大賞受賞。

どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。
誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。
あの日、あんたに逢うまでは――初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、
思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、
美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……儚く残酷な宿命の中で、
自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、
官能純愛絵巻。R-18文学賞受賞作。



アリスさんのレビューで知った憧憬カトマンズが読みやすくおもしろかったので、
引き続きこちらを読みました。
過去作品なので、すぐに図書館からきましたが、長待ちしていたものと重なって
しまい、焦りつつ読了。
第5回女による女のためのR-18文学賞受賞
このような賞があるとは知りませんでしたが、あえて手に取るには
いささか歳をとりすぎてしまったかと思ったのですが、心に沁みる作品でした。 
短編連作形式で、人物が他の章へと絡んでいき、人間関係がかなり複雑で、
あ~、こう繋がるのか、と納得しながら読むのでちょっと大変。
吉原にも格というものがあって、この話は、’総籬をもたない小見世、張見世に半籬があるぶん
小格子までは落ちないが、お茶屋の呼び出しだけでやっていけるような上玉揃いでもない’
山田屋の女郎たちの物語。
貧乏な村から売られたり、攫われたりして、年季があけるまで大門から出られない
遊女たち。死なずに生き抜けば大門の外に出られる。
’生きてゆくのは諦めてしまえばそう辛くない’とくくられます。
そんな哀しい遊女たちの話ではあるものの、ありんすことば、吉原を映し出す
表現の数々は、キラキラと美しい。 我々にとっては伝え聞いた世界ゆえ、
その単語にはおびただしくルビがついてますが、とにかくことばが魅力的。
官能部分も多々表現されてましたが、あまり淫猥な感じでもないのは女性のために
女性が書いたからでしょうか。
登場する遊女たち、単にからだを売る女ではなく、プライドを持った
激しくも活き活きとした姿が描かれてます。
江戸遊女、こんなこともあんなことも、すべてを書いてしまおうというような
作者の心意気を感じました。
最後に『私たちの知らない吉原で、恋に泣いて、思いを遂げられないまま
死んでしまった遊女たちの魂が、少しでも慰められることを願います』とは著者のことば。
遊女の魂を考えると少し放心しますが、選考委員の角田光代さんも 
『読み手の内に色彩を残すというのは、並大抵のことではない。文句なしの大賞受賞』と
絶賛されてます。 
そうです、色彩を残すのでした。 

さてこれを返したら、次も次もきてる、大変。 
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by kimikitak | 2012-04-22 10:35 |

ビブリヤ古書堂の事件手帖

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鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。
そこの店主は古本屋のイメージに合わない、若くきれいな女性だ。
だが、初対面の人間とは口もきけない人見知り。
接客業を営む者として心配になる女性だった。
 だが、古書の知識は並大抵ではない。
人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、
いわくつきの古書が持ち込まれることも。
彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。
 これは栞子と奇妙な客人が織りなす、“古書と秘密”の物語である。



俺(五浦大輔)の一人称で語られる話で、俺は二十三歳にして就職も決まらず、体力だけ
ある青年。子どもの頃にある理由から本を読むことができなくなる。
一方、ビブリア古書堂の店主篠川栞子は美貌で本好き、怪我で入院中ながら本に埋もれている。
古書堂で働くようになった大輔と、入院中の栞子と連携して古書にまつわる事件を
解決していく短編連作。
1.夏目漱石「漱石全集・新書版」(岩波書店)
2.小山清「落穂拾い・聖アンデルセン」(新潮文庫)
3. ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)
4. 太宰治「晩年」(真砂屋書房)
どの章も、事件は傾向も違い興味深く読み進めますが、
最初の漱石は、大輔自身の生い立ちにも関係。
最後、この連作の〆となる栞子自身に起こる話はセンセーショナルで、
よくできた結末だと思いました。突っ込みどころは多々あるとは思いますが、
古書の曰くなど、知識を得るのもおもしろく、痛快でチャチャっと読んでしまいました。
落ち穂拾いなどは読んでみたくなる一冊。
『せどり』ということばも初めて知りました。
  1.せ‐どり【背取】-日本国語大辞典
〔名〕古書売買の業界で、同業者の店頭から転売を目的として古書を抜き買いすること。

すでに二巻目も出ているので、これはシリーズ化するのでしょうか。
三上延という作者も相当な古書マニアなんだと思われます。 
書道の本を探したりするのに、時々駅前の古書店にときどき立ち寄りますが、
書道関係のものなどすごく古いものもあったりして、どなたが使ってたのだろうか、
どうして古書店に持ち込まれたのだろうか、など考えるときもあります。 
この文庫を読んで、古書店という存在がなにやら魅力的に思えてきました。  
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by kimikitak | 2012-04-04 20:55 |

最近読んだ本

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母から娘に伝える暮らしの流儀
有元葉子が娘に伝える美しい暮らしの流儀 有元葉子が初めて語る、
3人の娘への想い。料理、インテリアから旅、読書まで、娘達へ受け継がれた“
有元家の流儀”を知られざるエピソードとともに紹介


う~ン、ため息が出てしまう。
『結婚しても、主婦になって家事だけするというのはダメ、
 一生、仕事と勉強をすること。それが、うちの家訓よ』 
わかりすぎるくらいわかりますが、
ときすでに遅しの私。
同じ忙しいなら、自分を生きてる手応えのある人生に憧れます。  


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憧憬カトマンズ
「もうすぐ30歳だけど、自分探しなんて、しない。きっと、私たちは大丈夫!」
ハケンと正社員、外見と内面、偶然と運命? 
仕事に、恋に、ゆれるワーキングガール必読! 痛快! 爽快! 
ウルトラハッピーストーリー!!


アリスさんのご紹介で早速借りて読みました。
ホントに痛快でおもしろい。
内容は、アリスさんの感想にゆだねます m(__)m 
テンポといい会話の語彙といい、軽さといい隔世の感を抱きますが、
決していい加減ではなくて、むしろきちっと自分をつらぬくアッパレな女性たち。
言うべき意見はシッカリ言う、自分に無駄なことはしない、
自己責任をまっとうする素敵女子たちには、憧れました。
妙にさめてる部分もあるけれど、ちゃんとパートナーも見つけるあたり、
やはり女心は熱い!
口出しするのはやっぱりやめよう、若い人に、と思いました。
私にかぎりますが、あちらの方がずっと賢くてオトナだ!

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by kimikitak | 2012-03-25 21:20 |

そうか、もう君はいないのか

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天真爛漫な面影、声にならぬ悲しみ。凜として純真な愛に満ちた、妻との半生記。

最愛の妻・容子が逝った……。
特攻隊から復員した学生だった頃の奇跡的な出会い、
文壇デビュー当時の秘話、取材旅行の数々、甦る人生の日々。
そして衝撃のガン告知から、二人だけの最期の時間。
生涯、明るさを失わなかった妻よ、君は天から舞い降りた妖精だった……。
昨春、少年のような微笑を浮かべて逝った著者が遺した感涙の手記。



以前、アリスさんの感想も拝見し、いつか読もうと思いつつ、
ブックオフで文庫を見つけ、最近になって読みました。
文庫の解説は児玉清さん。 
児玉氏も昨年、77歳で故人となってしまいました。
「清々しく身を包む深い感動の波に心をふるわせながら、無常な天を仰いだものだ。
 なんと素敵な夫婦だろう。なんと素晴らしき結婚生活だろう。
 湧き上がる羨望の念とともに最愛の妻を失った城山三郎さんに心の底から
 シンパシーを抱いたのだ。長年連れ添った相方に先に逝かれる恐怖は
 年を重ねるごとに増してくる。しかし別れのときは必ず来るのだ… 」
と書かれてます。児玉氏は後に残されることなく天国にいかれたわけですが、
お二人とも、素晴らしい伴侶と良い人生をおくられたのだと思いました。 
次女の方のあとがきに、「通夜も告別式もしない、出たとしても喪服は着ない。
お墓は決めても墓参りはしない。駄々っ子のよう、現実の母の死は拒絶し続けた。」
「その後も母との終の棲家には帰れず、仕事場が父の住居と化してしまった」と
自分の半身がそがれてしまったようなショック、憔悴の様子、いかに悲しみが深いか
が記されてますが、その後、ひとりになった7年間は、さぞやお辛かったのでしょう。
本文では、容子さんのこと、夫婦のこと、日々のこと
思い出すべてが詰まっていて、妻に対する愛情の強さが随所にうかがわれました。
これほどまでに愛される奥様もそうはいないのでは?と思いながら、
美しい日々、キラキラと愛情に満ちた人生に感動いたしました。
戦争、しかも特攻隊、過酷な時代を過ごした青年期があって、人生を大切に生きる
姿勢が、このようなピュアで豊かな愛情となるのでしょうか。 
時代が変わり、家庭内の問題もいろんなカタチとなって増えつつありますが、
昨年の震災以来、また家族の大切さも叫ばれるようになりました。 
夫婦のあり方、家族のあり方、考えるべきときなのでしょう。 
このタイミングにこの愛情あふれる本を次の方にまわしたいと思います。
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by kimikitak | 2012-03-10 16:20 |

エトロフ発緊急電

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1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を奇襲。
この攻撃の情報をルーズベルトは事前に入手していたか!?
海軍機動部隊が極秘裡に集結する択捉島に潜入した
アメリカ合衆国の日系人スパイ、ケニー・サイトウ。
義勇兵として戦ったスペイン戦争で革命に幻滅し、
殺し屋となっていた彼が、激烈な諜報戦が繰り広げられる
北海の小島に見たものは何だったのか。山本賞受賞の冒険巨篇。


第2次世界大戦 三部作の第二作
ドラマにもなっていたのだと発見し、見たかったな~と。
でも、読み応えのある作品、頭でイマジネーションした方が、
良いのかもしれない。 
こないだも見た山本五十六に続き、パールハーバーへの攻撃がいかに
なされたか、こちらも史実の学習となりました。 
登場人物が多く、意味深く絡んでいるので、相関図を作るとよりわかりやすかったかと
思いました。 
主人公は、斎藤賢一郎(ケニー・サイトウ)という日系米人。 
学力優秀ながら、差別や経済力の壁もあって弁護士を諦め、果ては
殺し屋となっていたところを米国の諜報員に仕立てられた人物。 
実際にこんな人がいたら凄い。強靭で万能。
海軍機動部隊が極秘裏に集結するという情報を入手した賢一郎が、
ボロボロになりながら択捉島単冠湾(ヒトカップ)へと向かう。 
追手を振りきれるのか、ハラハラの連続である。
このヒトカップへの戦艦の集結は、やはり映像になると迫力があるのだろう
と思います。
南京での日本軍の暴挙も、宣教師スレンセン(実はアメリカ側スパイ)
の恋人も含めて暴行・虐殺するなどの状況、あってはならない
ひどさもしっかり書かれている。
そこに絡む日本軍憲兵たちが、また日本でのスレンセンと遭遇する。
その憲兵のひとり磯田が賢一郎を択捉まで追っていく。  
一方、択捉の灯舞の駅逓の女主人ゆき、のちに賢一郎と恋に落ちる、
ロシア人とのハーフの激しい生き様も、不自然でなく描かれ、
その強さは魅力があります。
真珠湾攻撃に関しては、アメリカ側はこの情報を入手できていたのか、
さまざまな説があるらしいですが、この物語では、その情報の打電は
賢一郎の手にかかっていて、ここらへんがミステリーとして
おもしろいところでした。
壮大な話で、読み応え充分ですが、戦争についてまたあらためて
考えるという部分でも、素晴らしい作品だと思いました。 
  
 
 
 
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by kimikitak | 2012-02-18 23:20 |

ふがいない僕は空を見た

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これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。
ずっと好きだったクラスメートに告白されても、
頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。
団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは
周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。
第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、
嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。


第24回山本周五郎賞
アリスさんのレビュー で読んでみたくなり、図書館にオーダー。 
かなり待って、忘れた頃に読みました。
最初は若者の実態、で、心がついていくかどうかと思ったものの、
テンポの速いストーリーなので、グイグイとよみ進みました。 
ここに載せようとサマリーを検索したら、映画化されるとわかりました。
ちょっと前のNHKドラおひさまにでていた永山くん、
コスプレ主婦で、高校生斉藤君をたぶらかす主婦役に
田畑智子は、ぴったりと思いました。
賞をとって、映画化、その事実をもってしても、
よくできた作品であることは明らかです。 
いちばんめの章でのどぎつい描写から始まって、
各々の章を、関係してる高校生たちの告白めいた日常が
明らかになります。
貧乏をかこつ福田くんに勉強の楽しさを教え、
進学して貧乏から脱出するよう勧める
アルバイト先の問題のある知性的な男も、
その性癖が明らかになるにつけ、現代を浮き彫りにしているようでした。
卓巳に思いをよせる女の子七菜とその秀才の兄が
転落していくさま、その後など 
スリルもあって、その成り行き・展開にもハラハラしました。
過激だったり緻密だったり、最初の主人公の卓巳の
その後にも興味がわきました、というか、どうおさまっていくのか、
再生する道はあるのか、親心に近い心境となりました。 
卓巳のお母さんである助産院を経営している母、
仕事に逃げながらも息子を見守る、たくましい母でありました。
およそ、現代の問題をてんこもりにしてるとみましたが、
無駄な表現のない、奥深い作品だと思いました。 
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by kimikitak | 2012-01-28 20:20 |

タルト・タタンの夢

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下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
風変わりなシェフのつくる料理は、気取らない、
本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。
そんな名シェフは実は名探偵でもありました。
常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか? 
甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は? 
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
……絶品料理の数々と極上のミステリ7編をどうぞご堪能ください。



「タルト・タタンの夢」
「ロニョン・ド・ヴォーの決意」
「ガレット・デ・ロワの秘密」
「オッソ・イラティをめぐる不和」
「理不尽な酔っぱらい」
「ぬけがらのカスレ」
「割り切れないチョコレート」


気取らないフランス料理、こんなお店を見つけるのはけっこう難しい。
下町の商店街の片隅にある小さなお店。 
このお店の名は パ・マルは悪くないという意味。
風変わりなシェフ三舟、ホテルのレストランの料理長
にもよばれるほどの腕を持つ志村シェフ。
ソムリエの金子さん 
ギャルソンの高築
この4人がこのお店のスタッフで、これらの話は
新米ギャルソンの高築の一人称で語られます。
このお店のお料理は本当に美味しそう。 
狭いお店ながら、お店はいつも予約でいっぱい、 
そんな実力派のお店。お客が持ち込む問題、不思議な出来事
を三舟シェフが、みごとに謎解きする、それも
どれも魅力的なお料理が絡んでて、いやがうえにも興味をひかれます。 
ロニョン・ド・ボーとは仔牛の腎臓の料理。好き嫌いの激しい客が頼んだが... 
ガレット・デ・ロワは、フェーブが消えてしまう理由は何か?
カスレ、ここではがちょうのコンフィを使うことに意味アリ。
7つの話は各々、違った趣向であきません。
それぞれにいろんな人の人間関係が絡んでいます。
ホッとしたり、イライラしたりするときにでてくる
ヴァン・ショーというホットワインも心温まりそうでした。 
殺人などおきないちょっとした美味しいミステリーといった感じで
サクッと楽しめました。 
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by kimikitak | 2011-12-20 22:33 |

九月が永遠に続けば

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高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。
愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。
息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、
雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。
悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。
人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて
読書界を震撼させたサスペンス長編。


沼田 まほかる
1948(昭和23)年大阪府生れ。主婦、僧侶、会社経営などを経て、
2004(平成16)年『九月が永遠に続けば』でホラーサスペンス大賞を受賞してデビュー



『猫鳴り』がとても引き込まれて、文章も好きだったので期待して読んでみたのですが。 
こちらは、えぐい、なんともやりきれないような話。
途中でちょっと嫌気がさしたのですが、なんとか最後の結末まで。
 
高校生の息子文彦が母親佐和子が頼んだごみを捨てにいったあと、
突然失踪するというのだから、あぁ、あのごみ捨てさえ頼まなければ...
と思わせるところ、興味深い始まりではありました。
父親雄一郎は精神病院の院長、佐和子と離婚して、患者だった亜沙実と再婚している。 
亜沙実の美しい娘冬子、冬子と付き合いのある教習所の教官をしている青年犀田、
その犀田と関係をもつ佐和子。文彦を好きなカンザキミチコ、
教師として全うでない過去を持つ担任越智、出てくる登場人物がどこか暗く歪んで
暗い雰囲気をかもしています。 
息子の失踪に気の狂わんばかりの佐和子の家庭に出入りする
同級生ナズナと服部の父娘。 関西弁で無神経な服部の言動に
心底イラ~っとさせられますが、この服部がいちばん健全なおじさんといえそうです。 
こういうイラ~っとさせられるところは、猫鳴りのときにイヤというほど味わいましたが、
そういう運びがとても巧み。 
中盤、亜沙実の過去があらわになっていくに従って、ウンザリとなりますが、
ここから先はもう、文彦がどうなってるか知りたくて先へ進むしかありません。 
なぜ、犀田が線路に落ちて死ぬのか、佐和子と服部が推理する部分が、かなりくどくて
ここもイライラさせられますが、もったり感によるところ。  
最後は、なるほどそう繋がったのかとなりますが、どうにも読むのに時間がかかって
しまいました。
狭い登場人物のこみいった人間関係!妖しい怪しい人たちで、息苦しくなりましたが、
細部へのこだわりを感じました。  
『猫鳴り』にあまりにも感動したので、こちらはちょっと残念でした。 
でも、光る文章も多く、今後またこの作家の作品は拝読したいと思います。  
  
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by kimikitak | 2011-11-26 17:50 |