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ラブレス

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謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた――。
彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。
道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、
やがては旅芸人一座に飛び込んだ。
一方、妹の里実は道東に残り、理容師の道を歩み始めた……。
流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして
、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。


馬鹿にしたければ笑えばいい。
あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。
電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。
昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。
「歌」が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながら―。
他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」。
「愛」に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?
今年の小説界、最高の収穫。書き下ろし長編


読んだのは、もうかなり前、ホテルローヤルは読んでないまま、
こちらを文庫で読みました。 友だちが貸してくれたので。 
登場人物の関係が最初頭に入らず、その上、舞台があちこちに飛ぶので
前に戻って読み返したりしながらついていくのに慣れた頃、
その先がどうなる?気になる展開にようやく引き込まれ、最後まで。 
それにしても、暗く、重く、もりだくさんの不幸なできごとが用意されていて、
息苦しくなるようでした。 
巻頭の部分、死に際には、年齢以上におそろしく老婆のようになった百合江、
凄絶な人生を予想させるものだったので覚悟はありましたが、まさに
波乱に満ちた、幸せが向こうから舞い込んでくることもなく、あてどなく、
それでも強く諦めることもなく、自分の人生を受け入れて前を見るたくましさに
感じ入り、生半可でない生き様に圧倒されました。 
旅芸人、流しの歌手、旅館の女中、得意の洋裁、など特技が身を助けつつも
であう男すべてが、不甲斐なく、愚かだったりで、本当に運のない女性なのですが、 
そうした中にもいつも自ら希望を見出す姿にほろりとします。
一方、妹の理恵、こちらも、一筋縄ではいかない人生を強いられてます。
また、二人の母親もまた、北海道の開拓村で、どうしようもない夫のもと 
人格を失ってしまうような人生を。 
たくましい女、あられもない男。 そんな対比も味わいつつ、かなりの読み応えを
感じました。 
フィナーレはなかなか、思いがけないもので、全体としておもしろく仕上がっている
と思いました。 
他の著作も読んでみてもいいかなと思いました。
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by kimikitak | 2014-05-08 10:58 |

白愁のとき

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五十二歳という働き盛りの造園設計家恵門を突然襲った記憶の空白。
私が失われていく!! 
自分の人格が崩壊していくというアルツハイマー病の告知を受けた男の
絶望と救済を描いた力作

造園設計家・恵門は、記憶の中にぽっかりと空白があるのに気付いた。
大事な会議で、使い慣れた用語がどうしても思い出せない経験もした。
ひょっとしてアルツハイマー病か?医師の判断を仰ごうと決心し、
身がすくむほどの不安を感じる。自分は本当に真実が聞きたいのか?
もし宣告されたら、この先の人生は?とてつもない恐怖に直面する患者の気持が、
読む者の心を打つ衝撃作。



以前、荻原浩 『明日の記憶』で同じテーマの作品に出会い、映画は渡辺謙、樋口可南子で
見た記憶がありますが、こちらはミステリー作家夏樹静子の作品 
友人が貸してくれたので…明日は次の人にまわすので、感想書いてます。 
『明日の記憶』も衝撃的だったけれど、あのときは自分がまだ少々若かった分
客観的に見てたような。
横山秀夫の『半落ち』もこのテーマだったか?と。 
最近、「あれ」が多くなってきて、我が身に置き換え、怖くなりながら
読みました。 
主人公の造園設計家・恵門は、使い慣れたことばが突然でてこなくなり、亡くなった叔母の症状を
思い起こし、医師をたずねるが、身のすくむような恐怖を覚える。 
なんと、残酷な... 
巻末に理研のアルツハイマー病研究のチームリーダーの方の解説があります。
平成16年の時点での解説ですが、家族性・若年性アルツハイマーの遺伝子はつきとめられています。
この10年で、この病気に対する薬もだいぶ変化してるであろうし、なんたら夢の細胞もできれば、
進行も防げるのかもしれません。 
著者もかなり研究したと思われますが、徐々にあられもないことが起こっていく様子を
リアルに描いてます。
この話の主人公は、自らの今後を 「精神余命」として、苦しみます。
また妻も、得体のしれない恐怖を覚えつつ、支えなければと葛藤、 
また、父親として、息子にも将来を見据えてひとつの重い頼み事をします。 
そんな中、美人デザイナーの桐乃がありのままの自分を受け入れてくれることで
希望がわき、故郷での仕事につながっていくという、ロマンスも挿入されて
少々、気分もそれますが、いずれにしても 重いテーマでした。 

さて、タイムリーにもテレビで 認知症の原因と予防をみました。
脳内でのβアミロイドの増大がこの病気の原因で、これをたまりにくくしなければいけないようです。 
たまりやすい原因 
  糖尿病 脂質異常 ストレス 寝不足  高血圧 歯周病 視力・聴力の低下 等
予防としては
  運動 (こまめにからだを動かす たとえば雑巾がけなども)
  食べ物  野菜・果物 ポリフェノール 青魚
  社会的接触 (脳に刺激を与える)   

まあ、当たり前のことばかり、検索すればもっと教えてもらえましょうが、 
日常生活のあり方が大切なのは確か。
ニュースで、認知症の男性が踏切に入って亡くなり、電車をとめた責任の裁判で
介護責任のある高齢の妻に 過失責任で賠償金を支払うことが決まったとあり、
驚きましたが、とにかく心身の健康に気を遣わなければと思います。 
 
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by kimikitak | 2014-04-28 00:06 |

電車で読む本

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子供ができないまま六年目を迎えた結婚生活に、すれ違いを覚える洋一と映子。
やがて二人は、互いに異なる人へ想いを寄せ始めていく。
婚外恋愛の甘さと苦さが胸にせまる、大人のための恋愛小説。

やさしい夫に愛されている女はいくらでもいる。
けれども夫以外の男から、激しく思慕されている女が、いったい何人いるだろうか―。
ワイン工場と葡萄園を経営する夫と、平凡な生活を送る映子。
だが、子どもができないことへの負い目から、二人の心は少しずつすれ違っていく。
やがて、互いに異なる相手へ想いを寄せ始めるが…。
結婚の苦さと婚外恋愛の甘さを描く、大人のための恋愛小説。


友達が電車用にまわしてくれた、読みやすい本。 
真理子先生の出身地、山梨が舞台。 
1998年の作品なので、微妙に過去ですが、私の若い頃よりずっと感覚は新しいはず。
林真理子の中・高時代のモデルもあるのかもと思いながら読み進みましたが、
なんといっても、あそこもここもどこもかしこも、みんなちょっと繋がってる
いなかの閉塞感に逃げ出したくなりそうな空気が全編を通じて流れてました。 
方言で会話も書かれているので、よけいに地元の感覚があらわで、
真理子さんは、かの土地から脱出したかったのだろうと想像しました。
いつの時代も不倫はあるものの、その時代その時代によって重さも
代償も違うと思いますが、必ず責任は誰かがとらなくてはいけないのが世の常。
この話も、そう軽くなくて、意外に内容はシビアで、なかなかにドキドキさせられるものが
あり、するすると読みました。 
問題を含みつつ、再生方向にいく結末は救いがありました。 


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優しい夫に真っ白でふわふわな猫―美由紀の満ち足りた生活は、
夫の溺死によりピリオドが打たれる。しかしそれは、
新たなる絶望への幕開けに過ぎなかった。
小説推理新人賞受賞作「隣人」を含む戦慄のサスペンス集。
予測のつかない結末6篇!


永井するみ… 初めて目にしました。 が、既に亡くなられた作家さんなのでした。 
表題作の隣人、この隣人というタイトルは、すでに映画やドラマに
恐いストーリーがいろいろあったと思い返し、タイトルと装丁だけでも不気味な様相を
感じました。 
他の作品も、心の叫びというか、人の心に潜む暗いどろどろしたものが
積み重なって爆発する、最後には想像をはるかに超えた結末が待っていると
いった感じで、先が知りたくなる短編でした。
人の内面の表現もうまく、見た目だけでは絶対にわからない人の奥底を見せられた
ようでした。  
ミステリーなので極端ですが、普通の人の生活の中にも、なにかしら似通ったことが
おこってるのだろうと思えます。 
おもしろかったので、長編も読んでみたいところで。
 
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by kimikitak | 2014-03-21 21:01 |

天に堕ちる

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出張ホストを買う孤独な女・りつ子。
自殺願望のある風俗嬢・茉莉。
八人の女と同居する中年男性に安らぎを求める加世子。
アイドルのおっかけに夢中の高校生・奈々美。
女になりすましてメールを書く淋しい青年・光。
息子を溺愛する有名女優・黎子
―彼らが求めたものとは?欲しかったのは、当たり前の幸せだった。
「幸福」にも「愛」にも、色んな貌がある。
10篇の天国と地獄の物語



お出かけ電車で読むのにちょうどいいと友だちが進呈してくれました。
先が知りたくなるストーリーは、集中しやすく、すぐ読めてしまいます。 
どの話も、最後にはオチが用意されていて、なるほど~と
ちょっとため息ものの結末でした。 
その中に、日常に潜む孤独がひしひしと伝わってきて、ちょっと背筋も寒くなります。
普通の当たり前の幸せを手にいれるのが、いかに困難か、
昭和の時代より厳しい昨今を感じます。 
文庫の特典、最後の解説が、また素晴らしく、”自分から逸脱の道を選ぶ女性”
と、この主人公たちを表現してますが、一歩ずれれば、誰もがそんな道に入り込んで
しまいそうな現代社会。 
そのあやうさが、これらのストーリーの原点でしょうか。
解説では、18世紀のセアラ・フィールディングという女性作家が引き合いに出されていて
それが、興味深い内容で(書くと長くなるので頭の中にだけ)
あぁ、解説とは、こういう派生があってこそ、解説らしいのだなと、
妙に納得しました。 
あげくは、そのあとに触れられた、セアラの兄のヘンリー・フィールディングの
『トム・ジョーンズ』という小説、読んでみたくなりました。 
このセアラのあとの時代がジェーン・オースティン。 
高慢と偏見、映画となったの見損なったので録画したのを見るのが楽しみ。 
というわけで、1冊の本から、あれこれ思うのでした。
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by kimikitak | 2014-01-14 19:49 |

夜叉桜

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江戸の町で女が次々と殺された。
北定町廻り同心の木暮信次郎は、被害者が挿していた簪が
小間物問屋主人・清之介の「遠野屋」で売られていたことを知る。
因縁ある二人が再び交差したとき、事件の真相とともに
女たちの哀しすぎる過去が浮かび上がった。
生きることの辛さ、人間の怖ろしさと同時に、
人の深い愛を『バッテリー』の著者が満を持して描いたシリーズ第二作。


前作の弥勒の月に続き二作目ともなると、
登場人物のキャラクターも、より自分なりに捉えられるようになって、
主人公3人に、親近感と魅力を感じるようになりました。 
ことに信次郎は、前作では粗暴な気なしに感じることも多々あったのに、
今回は、事件解決能力を発揮しつつも、人の心をそっと慮ることのできるいいヤツと
感じられるようになりました。  
さてそうなると、この信次郎に誰をキャスティングするか、いろいろ思い巡らせたりが
楽しみのひとつ。 
剣の使い手として凄腕をもつ遠野屋清之助、父親の刷り込みによって人を殺めることを
疑問なく暮らした過去は完全に払拭され、商人として市井に生きることに生涯を
かける姿が、潔くかっこよく、これはまた、かなりの端正なスッキリ美男子でないと映像にはなって
ほしくないな~と思いつつ、進みました。 
前作より、読みこなしやすく、江戸の風物にもすっかり入り込めるほどなじめました。 
もう一人の主人公伊佐治は、今回も、信次郎を何かにつけ、敬愛しつつも諫める役どころ、
家族にも恵まれた初老の男性、この人あってこそ信次郎のキャラが活きてくるのです。
年かさの人として言う、しみじみとした人生訓も、なかなか。  
と、熱く思い述べましたが、話は、物哀しい女郎連続殺人。 
昔の厳しい時代の悲哀が、心に迫ります。 
ミステリーなので、偶然や、こじつけはやはりないわけではありませんが、 
この話は、事件解決よりも人の心の動きを感じ味わうことの方がおもしろいのです。 
さりとて、事件犯人の意外な動機も見逃せず、ミステリーとしてもシッカリとしててよかったと思いました。
私の感想はこんなところですが、解説が三浦しをん先生ともなると、作品がまた数割りアップ。 
さすが作家先生。
どうか幸せになってほしい、信次郎も清之助も伊佐治親分も、架空の人物のはずなのに、
本気で願ってしまう。これも、夜叉桜が胆力を秘めた物語だからこそだ。
ひとがひとであるかぎり孤独からはのがれられない。運命と意思の狭間でもがくしかない。
だが、孤独を越えて結びつきあい、希望を見いだすことができるのも人なのだ。
すべての登場人物の生と死が、私たちの行く道をほのかに照らしている。

と、〆はこうなるのです。 
本当に、そう! そう思いつつ、今一度読み返したいなと思います。
 
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by kimikitak | 2013-12-15 19:18 |

弥勒の月

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小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの水死体が発見された。
同心・木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人・清之助の眼差しに違和感を覚える。
ただの飛び込み、と思われた事件だったが、清之助に関心を覚えた信次郎は
岡っ引・伊佐治とともに、事件を追い始める……。
“闇”と“乾き”しか知らぬ男たちが、救済の先に見たものとは? 哀感溢れる時代小説!
 

初めて読むあさのあつこ、しかも時代小説。 
姉がこの続編 『夜叉桜』をおばに薦め、いたく感動した叔母が私に薦め、
それならと、まずはシリーズの最初から。 
3冊目の『木練柿』まで、いいらしい。 
叔母に至っては、素晴らしいと感動して、何度も繰り返し読み返してるとのこと。 
それもわかる気がする。 
文章表現が素晴らしいのもわかるけど、時代物、ことばも現代とは違うし、人物、設定等
少々、頭をはたらかせないと、なかなかつながらないので、そうは簡単に読めないのでした。 
何が素晴らしいかって、江戸の情景が目に浮かぶような、表現力! 
その表現を切り取って使ってみたくなるような、文章力だ。 
話は、おりんの入水に始まって次々におこる殺人、事件を解決しようとする同心と岡っ引きの
活躍するミステリー。 そこにさらに、おりんの夫、遠野屋主人の謎・闇の解明。
解説は今は亡き児玉清で、この解説がまたとても素晴らしい。
ろくでもない感想しか書かない私が素晴らしいと絶賛したところで埒もないですが…
物語の面白さにぐいぐいと心を傾けながら、読者は、作者の投げかける人生への
深い洞察に満ちたことばの数々に暫し呆然と立ち止まるほどの衝撃を受けることになる

っというようなぐあいで、読むスタンスも違うのでしょうが、本文を読む前にこの解説を読めば
わくわく感はいやが上にも高まり、読後に読めば、より深い感動になるかもしれない。 
私はといえば、途中でがまんできずに読んで、感動の幅も広がったような気がします。  
夜叉桜の解説は三浦しをんで、叔母に言わせると、その解説は更にもっと素晴らしいのだそうです。
この本は手元にないので、読むのはまだ先ですが、こちらの方がもっとおもしろいみたいです。
主人公たち、もしもドラマになるなら配役は?なんて勝手に考えたりしましたが、
3人ともかっこ良いので、それなりの人でないと。
夜叉桜を読んだら、勝手に配役してみよう。 
何度も読んでるという叔母の意見も聞いてみよう。
まあ、そんな楽しみも思いつくような、おもいがけない感動ものの1冊でした。 
あ~、ドライアイになってきた。老眼も進み、 
本もパソコンも、新聞も書道も辛いこの頃であります。

 

  
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by kimikitak | 2013-10-15 22:20 |

55歳からのハローライフ

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人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。「結婚相談所」
生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない。「空を飛ぶ夢をもう一度」
お前には、会社時代の力関係が染みついてるんだよ。「キャンピングカー」
夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしてると思ってるんだ。「ペットロス」
人を、運ぶ。人を、助けながら、運ぶ。何度も、何度も、そう繰り返した。「トラベルヘルパー」

ごく普通の人々に起こるごく普通な出来ことを、リアルな筆致で描き出した村上龍の新境地


   個人があらわになったとき 家族との絆が必要になる 村上龍

近所のSさんが期限内だからと貸してくれた。
新聞連載の中編連作。
定年後の老いとともに訪れる、生活の難しさ。
まさに、我々の世代の普通の人々の話。
思い当たるふしが、どの話にも潜んでいて身につまされる。
各々、アールグレイ、炭酸水、プーアール茶など、飲み物が心を
落ち着かせるてだてとしてでてきて、おいしそうだ。
・結婚相談所
・空を飛ぶ夢をもう一度
・キャンピングカー
・ペットロス
・トラベルヘルパー

結婚相談所に登場する男たちのありそうな風体やらクセに、中高年の
再婚の難しさを実感。 
やはり離婚してる場合じゃない^^
でも、この話の主婦は熟年離婚を果たし、夫側からの未練に心揺れつつも
ひとりで生きていく道を選ぶプロセスになっとく。
キャンピングカーは、定年後、妻との時間の誤差にようやく気づき心のバランスを崩していく夫、
妻は自分の時間を既に大切にしていて、夫のはいるすきはわずかしかない。 
ペットロスは印象的で、夫婦の会話の行き違いに思わずニンマリしてしまう。
この話がいちばん心に残るかな?痛々しいまでにリアル。
夫のつっけんどんなもの言いにいつも傷ついていた妻。
自分の存在価値を疑問に思う上、
よその奥さんばかり褒めて、人様には愛想もいい夫。
子育てが終わって、そんな夫に希望を見いだせない妻は犬を飼う。 
やがてその犬を失うときが来る。
そこで初めて分かり合えそうな夫婦。
そんな心の機微がうまく表現されて、共感出来ました。
 
『実際に、自分で人生のすべてを選択できる人なんていない』という結婚相談員のことばどおり、
普通の人々は選択肢が限られた中でがんばって生きていくしかないのです。 
今までに前例のない難しい時代に突入している我が国。 
親の世代を真似してても、まっとうには生きていけない。
そんな生きづらさを踏まえて、各々のストーリーに思わずドキッとするのでした。

村上龍は、『半島を出よ!』 以来。 あの話は独創的、強烈でスゴイと思ったけれど、
この話は普通のシニアの生きづらさを描いていて、思わずため息が出てしまいました。
村上龍ご自身は、普通の人ではないのに、よくリサーチした結果の本書だと思います。
女性の心情が、よくわかってるところがさすがと思いました。 
小池栄子とともにでてる対談番組でも、イヤミなく個性を発揮してると思ってみてましたが、
限りなく透明に近いブルー以来、すごく好きな作品’半島を出よ’ に続き、
ファンとなってます。
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by kimikitak | 2013-09-12 20:09 |

銀二貫

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大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。
大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、
商人の厳しい躾と生活に耐えていく。
料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、
またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す…。<
br clear=all>
めったに手にとることのない時代小説。 
ベストセラ-にもなってたし、新聞にも紹介されてたので、
軽い気持ちで読み始めたら、先が気になってとまらない。 
鶴之助(松吉)を銀二貫で助けた和助、
大阪天満宮に寄進するための大金をこんなことに使ってしまった主に
憤懣やるかたない番頭善之助、
善之助に認めてもらえないことを悲しく思う松吉
そんな3人を軸に、この寒天問屋をとりまく人々、
すべてわかりやすい人物像で、いいもの、悪いものに分かれ、
時代劇を見るようです。
だからといって、薄っぺらではないところがまたいいのです。 
大阪商人の心意気、和助という人、先を読む力も素晴らしく、お金の使い方は
決して死に金にならず、いつも周囲をいたわることになるところは、
読みながら、先が想像できても、心地よいなりゆきで嬉しくなります。 
解説によれば、高田郁(カオル)という作家さん、
作品に登場するお料理、全部自分で作ってみて、納得いかないと執筆しないらしい。 
この度は、寒天料理、しょっちゅう寒天をふやかして格闘してたようです。 
寒天作りの製造過程も興味深く、天草と水の産地の相性や天場の様子など、
詳しく知るにつけ、寒天の奥深さに驚きましたが、その資料集めひとつも
他人任せにしないため、効率の悪い取材活動の連続の果ての作品らしく、
簡単に読んでしまうのは悪い気がするという解説者に、なるほど~と1票でした。
大阪弁の作品ですが、時代にあったことば、使いまわし、
大阪商人の気質も、ありありと描かれて、みたこともないのに昔の
風物が目に浮かぶようでした。 
この時代の火事のおそろしさも半端なく、何度となく辛い方向へいきそうで
ハラハラドキドキ感もあります。 
この作者の、みおつくし料理帖のシリーズも読んでみたいと思いました。
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by kimikitak | 2013-08-18 21:45 |

追悼者

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浅草の古びたアパートで絞殺された女が発見された。
昼は大手旅行代理店の有能な美人ОL、夜は場末で男を誘う女。
被害者の二重生活に世間は沸いた。
しかし、ルポライター・笹尾時彦はОLの生い立ちを調べるうち、
周辺で奇妙な事件が頻発していたことに気づく。
「騙りの魔術師」が贈る、究極のミステリー。
 解説・河合香織


初めての作家、名まえすら知らなかったけれど、
エンタメ友だちがまわしてくれたので。 
東電OLものは、以前、読んだ記憶がありますが、これも
あの事件をモチーフにしてると感じる出だしながら、すぐに全く別の様相を呈し、
複雑に展開。 
殺されたOL大河内奈美は、東電OLさながらの優秀でいて屈折した人物像。 
複雑な家庭環境のもと、奈美の周辺はいつも事件がつきまとい、 
不幸になる人が続出。 
奈美が殺されたことで、ノンフィクション作家たち3人がこの事件を取材しはじめる。
主人公笹尾時彦も、何か一発当てたいと、また今年賞をとった若い女性ライター、
大物のノンフィクション作家も絡み、まだ捕まっていない犯人探しを兼ねた展開となり、
読者も犯人探しを強いられることとなります。 
何しろ生い立ちから、奈美の家庭環境から、友人関係、会社の同僚など
取材対象が多く、人物相関図でも作らないと、ごっちゃになりそうで、途中
だれてきましたが、取材中にも関係者が危ない目にあったり、殺されたり、
危険をはらんでいて、はらはらさせられます。 
いいかげん誰が犯人?とイライラしますが、ミスリードにはまるまいと、
必死に犯人を想像しつつ読みました。 
こういう話にはつきものの、ちょっとムリもあったりしますが、 
最後エピローグまで気がぬけません。 
途中のだらだら感を乗り越えればおもしろいかと思いますが、
少々、読むのが大変でしたが、読み応えはありました。
東電OLとは、全く別の話。  

 
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by kimikitak | 2013-07-05 16:27 |

ぼくたちの家族

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家族の気持ちがバラバラな若菜家。
その仲を取り持ってきた母の玲子の脳にガンが見つかった。
突然の出来事に狼狽しつつも玲子のために動き出す父と息子たち。
だがそんなとき、父が借金まみれだったことや、
息子たちが抱いてきた家族への不満が露になる…。
近くにいながら最悪の事態でも救ってくれない人って何?
家族の存在意義を問う傑作長編。

]

妻夫木聡、石井裕也監督「ぼくたちの家族」で初共演・池松壮亮と兄弟に

エンタメ好きの友だちがくれた文庫。 
表紙に妻夫木・池松の顔がでんと載ってるので、いつものように配役は誰がいいかなどと
考えずに、兄は妻夫木、弟は池松でイメージしながら、電車でほぼ読んだ。
では、両親は誰がやるのかという疑問は、調べたら
小さな会社の社長だが、やがて多大な借金を抱えてしまった父“克明”に長塚京三、
突然の脳腫瘍に襲われ少女化していく母“玲子”に原田美枝子 と出てた。 
普通の家族にしては美しく、豪華メンバーです。 
『若菜玲子は、’うなぎ’という単語が出てくるのに7分かかった…』
冒頭から、目が離せない、今後を踏まえるととても身につまされるすべりだし。 
玲子のように同級生と一緒のときにこんなことになったらどうしよう~~ 
郊外タウンの住宅ローン、父親の仕事の失敗、独立、長男の中学不登校、
次男の浪人の後の東京一人暮らし、長男の結婚など、次から次に
家族の問題がてんこ盛り。
出会った頃は『にこちゃん』などと呼んでた笑みをたやさなかった夫は、
いつしか外面だけが良い不機嫌男に変わっていた。 
息子たちは出て行き、ふとしたときに差し込まれるような寂寥感におそわれる。
そんなきりきりした中、玲子は確実に壊れていくのだろうか、自ら(’物忘れ’と
検索するのはどんなに怖ろしいだろうか、などと思いながらの滑り出し。 
長男妻夫木とその妻深雪、妊娠報告の両家顔合わせで、
唐突に変なことを言い始め、全員の前で玲子がおかしいことが発覚する場面は、
映画になったら、どうだろう?役者の演技が見どころになりそうです。
長男とその嫁の今後も暗澹たる気配が…
ここからは、病気との闘い、その家族の闘いが始まります。
母の咆哮から始まって、兄の自覚、弟の希望、父の威厳、最後、ぼくたち家族と、
章が進むごとに、少しずつ光が見えてきます。 
最後に行く頃には、兄弟の嫁同士もいい雰囲気になるのですが、
この話の息詰るような、ツライ現実は、意外にどこにでもありそうです。 
この作者は、’77年生まれだからまだ30代、それにしては、
女性たちの心情もよくわかってるようで、母玲子の気持ちも
嫁深雪の気持ちも、上手に描かれてました。 
あとは、映画に期待です。

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by kimikitak | 2013-06-20 16:33 |