カテゴリ:本( 153 )

舟を編む

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言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを
謳いあげる三浦しをん最新長編小説。

【辞書】言葉という大海原を航海するための船。
【辞書編集部】言葉の海を照らす灯台の明かり。
【辞書編集者】普通の人間。食べて、泣いて、笑って、恋をして。
ただ少し人より言葉の海で遊ぶのがすきなだけ。

玄武書房に勤める馬締光也。
営業部では変人として持て余されていたが、
人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、
辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。

定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、
徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。

個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。
言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく――。

しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか――。


2012年 本屋大賞 第1位!!

図書館3桁待ち、ようやっとまわって来ました。
読んだ人は一様に「良かった」と言ってましたが、やはりおもしろかったし、
興味深くもあり、読み応えもありました。 
2013年4月には映画化されるようです。 
主人公馬締(マジメ)は松田龍平
香具矢は宮崎あおいのようです。
とすると西岡チャラオはオダギリジョーなのでしょうか。

「言葉は、言葉を産み出す心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。
 また、そうであらねばならない。自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟。」
これは、辞書づくりに生涯を捧げ、病に倒れた松本教授のことば。

今でこそ、意味不明と思えばネットで検索できる時代になったものの、 
辞書の役割がなくなったわけではない。
 
ひところ、分厚い『日本語大辞典』をランダムにめくって、いたく感動したことがありました。 
パッとページをめくって、そこにある写真や、今まで知らずにいた言葉に
日本語の奥深さを感じたりしてました。 
当たり前のように見てた辞書ですが、そこには驚きの苦労と努力に積み重ねがあった
こと、この本でよくわかりました。
時代が変わっていく中で、辞書も姿を変えるのですね。  

堅物で、変人の馬締。
馬締の才能を見出したチャラオ西岡。
馬締の恋の相手、板前の香具矢、
どの人も、成長していく。 
その成長がとても素敵に描かれてます。  
後半では、ファッション誌から転属になった岸辺みどりが、 
地道に才能を発揮する。 
辞書づくりの果てしないドラマ、十数年かけての大仕事における
人間模様、そこに出てくる人々の情熱。
どの人も成長していく中でも魅力的です。
読者は夢の様で達成感も味わえる、
そんなドラマだと思いました。 
言葉、ここまで長く生きてきても、知らないことばが山ほど。 
ネットで見るのと辞書で調べるのとでは、また違うでしょう。 
言葉の大切さ、日本語の美しさをまた認識した1冊でした。 


 



 

 
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by kimikitak | 2012-09-17 21:16 |

池井戸潤

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大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢。
支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。
すべての責任を押しつけようと暗躍する支店長。
四面楚歌の半沢には債権回収しかない。
夢多かりし新人時代は去り、気がつけば辛い中間管理職。
そんな世代へエールを送る痛快企業小説


ずいぶんと前に一気読み。
暑いので感想もまとまらないけどおもしろかった!
バブル?その頃、別にバブリーに縁はなかったけれど、世の中浮かれていて、
なにかいいことありそうな、そんな気がしたことはたしか。 
その頃、学生の就職戦線で都市銀行は人気絶頂。
それから十余年、銀行は凋落の一途をたどった。 
バブル入社の半沢と同期たち、各々のその後、
評価が高かったにもかかわらず、実績をあげられず、専制君主タイプの上司との
折り合いも悪く、統合失調症になって休職する近藤。
研修制度により司法試験を受けても合格できずに昇格が遅れる苅田。 
など、希望と転落、これも現実だったのだろうと心おだやかならずに読み進みます。 
銀行スキャンダル、不祥事も派手だった、旧大蔵省の色ボケ接待や官民癒着など、
果ては銀行不信はつのるばかり。
確かにあの頃、あんなこともあっとこんなこともあったと、いろいろ蘇りました。
バブル崩壊後の不況の世の中、無理な融資を支店長から強要されたあげく、
責任を押し付けられた主人公半沢。 
いくらなんでもこんな支店長さん、現実にいるんだろうか?というワルでした。
また、銀行に入る査察、国税の統括官と査察官たちの横柄な態度、その描写は
きっとそんな風なんだろうなと、妙にリアルです。
さて、この物語の落ち着くところはどこなんだろう?と考えながら
のっぴきならない私利私欲、生活と家族のかかってる支店長と半沢の対決、
最後まで、読者ながら悪を退治する気まんまんで読みました。
だからこそおもしろいので、次回作、花…も読みたいと思います。 
うっすらバブルも楽しめて、良かったです。
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by kimikitak | 2012-09-10 18:32 |

平松洋子のエッセイ

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仕事で訪れた外国の街のその男は、初めて会ったのになつかしいひとだった……。
夜匂う花、口中でほどける味、ふるい傷の痛みが、記憶をたぐりよせる。
伊丹十三、沢村貞子、有吉佐和子、殿山泰司など愛読書の頁を繰れば、
声の聞こえる思いがする。
誰もが胸に抱くかけがえのない瞬間をすくいあげた、こころにのこるエッセイ66篇。

書評・対談


平松洋子といえば、もともと料理研究家というイメージ。 
最近は、新聞でもエッセイに出会って、そのおもしろさに思わず笑えたり。
何冊か食関係のエッセイも過去に読んでみたけれど、 
その着眼点と文章力で、どれも内容が濃くて楽しいと思ったものでした。 
こちらの本は、新聞で角田光代が褒めていたので、図書館にオーダー
『この人の凛りんとしたたくましい文章は、読む、というよりも、味わう、という表現がふさわしい。
五感を刺激されながら、句読点までしゃぶるように味わい尽くした』 
という、角田さんの評も素晴らしく読む気にさせます。 
そんな期待を裏切ることなく、数多くの話題が美しい文章で綴られてました。 
油揚げ一枚が驚くほどの文章になるのも彼女ならでは。 
冷やし茶碗蒸しをつくろう、と思いついたくだりには、
ついついこちらも作ってしまうのでした。 
ただ話題によっては、あまりにも詩的で美しい文章になっていて
凡人の私には、かえって響かないというのもありました。
ことばが溢れてくるのか絞りだすのか、単なる日常生活も深いものにみえてきます。
次は 
タベルタビカンコクムカシノアジ
食べる旅 韓国むかしの味 
    も読んでみたいと思います。


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ずっと前に買った平松洋子の料理本  
この本にもずいぶんと楽しませてもらいました。
あまりにも才女なんでしょうね。  
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by kimikitak | 2012-07-26 13:43 |

サクリファイス

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ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。

勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、
冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。
初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。
それは、単なる事故のはずだった――。
二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、
押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。



タルトタタンの夢で、ご馳走ミステリーを堪能、同じ著者が書いた全く違う
テーマ、自転車競技のミステリ-、これもおもしろかった。 
続編もあるようで、この興奮のあとゆえ、そのうち読みたいと思います。
   ↓ 

あの『サクリファイス』の続編、遂に登場。今度の舞台は、ツール・ド・フランス!

あれから三年――。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。
だが、すぐさま彼は、チームの存亡を掛けた駆け引きに巻き込まれ、
外からは見えないプロスポーツの深淵を見る。そしてまた惨劇が……。
大藪賞受賞、本屋大賞2位に輝いた傑作の続編が、新たな感動と共に満を持して刊行。


ツール・ド・フランスはテレビで何度か見て、まずは、先頭の選手が風よけの役割だったり
することにビックリした記憶がありますが、 この競技はかけひきもあってとっても複雑。
テレビで解説つきで見てもとてもシロウトには理解しがたいもの。 
何故に、エースを勝たせるためにアシストでがんばるのか、意味がわからないままでした。 
この作品を読んで、チーム競技のあらかたがわかった気がしました。 
文庫解説によれば、自転車競技関係者の間で評判を呼んだ、っとなっております。 
'08年のツール・ド・フランスでは、生中継の間に解説者がこの本を紹介したとのこと。 
最初は、軽くロードレースが誰にもわかるよう、説明的なドラマが展開しますが、
後々、どんどんドラマが恐ろしい方向へ行っちゃいます。 
果たして、悪いのは誰?な~んて思いながら、進みました。 
事の真相が徐々にわかっていく段階で、思いもよらぬ結論が導きだされます。 
エースとアシスト、ひとりでは決して勝てない競技、
それでもエースを勝たせるためのチーム競技。 
過酷なスポーツであることをあらためて思い知らされました。 
最後の最後のオチのところまで、誰が悪いのか、
作者の思う壺ツボに振り回されながら読みました。 
ゾッとするような成り行きでしたが、
穏やかな主人公、白石誓の輝かしい未来に心が和んだところで終わり。
続編に期待がかかります。 


  
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by kimikitak | 2012-06-27 22:52 |

崩れる

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こんな生活、もう我慢できない…。自堕落な夫と身勝手な息子に翻弄される主婦の救いのない日々。
昔、捨てた女が新婚家庭にかけてきた電話。突然、高校時代の友人から招待された披露宴。
公園デビューした若い母親を苦しめる得体の知れない知人。
マンションの隣室から臭う腐臭…。
平穏な日常にひそむ狂気と恐怖を描きだす八編。
平凡で幸せな結婚や家庭に退屈しているあなたへ贈る傑作短編集。

崩れる
怯える
憑かれる
追われる
壊れる
誘われる
腐れる
見られる



平凡で幸せで退屈なんてことはないけれど、移動中に短編は読みやすいのでブックオフで購入。
前に読んだ小池真理子の短編と感じが似ている。
著者初めての短編で巻末に自註解説、集英社文庫解説(桐野夏生)、
角川文庫版解説(藤田香織 書評家)がついていて、
読んだあとの解説もたっぷりで、薄い本のわりに読み応えがありました。 
かなり前に読んだわりに、タイトルを見ると内容を思い出す、ということでインパクトあり。
8つの話、すべてテイストが違い、このあたりは作者も苦労しながら生み出したらしい。
この作品の時代背景はまだ携帯電話が普及する前、 
その後に起こったさまざまな事件はこちらも今に至るまで思い浮かぶも鮮烈なものがありますが、
それを見越したような作品でした。 
最後の解説に、貫井作品の短編の魅力に開眼した人は、ぜひ
中編集『光と影の誘惑』と、約十年に渡る歳月をかけ完成した短篇集
『ミハスの落日』も手にとって欲しい、とのおススメが書かれてました。
さらに容姿端麗、頭脳明晰なオレ様作家探偵・吉祥院慶彦が活躍する
『被害者はだれ?』も楽しめるらしい。 
φ(..)メモメモ  おもしろ進めるのは何より、読んでみようかな。
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by kimikitak | 2012-06-24 13:34 |

会いたかった人

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「いやだ。わからない?そんなに私、変わった?」
良美はそう聞きながら、走り寄って来た。
少夜子はやっとの思いで笑顔を作った。
これがあの、魅力的だった結城良美であるとはとても信じられなかった。
花形心理学者・諸井小夜子は、中学時代の無二の親友と25年ぶりに再会した。
が、喜びも束の間、直後から恐怖に悩まされ始めた…。



もうかなり前に読んだ小池真理子の短篇集
・会いたかった人
・結婚式の客
・寄生虫
・木陰の墓
・運の問題
・甘いキスの果て
タイトル書きながら思い出しましたが、どんでん返しあり
思いがけない結末あり、このあとどうなるのだろうと余韻を残す
ものありで、先を読まずにいられないお話でした。
日常から展開していく恐怖、心理描写も細かく、上手だ!
よくこんな話を思いつくなぁと感心しながら(えらそうです)
スラスラと読みました。
娘婿をうとましく思う母親の情を描いた『寄生虫』がことに
印象的。 家族の中の他人はとかく問題になりますから。 
『結婚式の客』は、ちょっと笑えます。 
短編のわりに読み応えがあり、発想力に拍手、おもしろかったです。
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by kimikitak | 2012-05-28 01:12 |

大人の流儀

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苦難に立ち向かわなければならないとき。
人に優しくありたいと思ったとき。
どうしようもない力に押し潰されたとき。
自分のふがいなさが嫌になったとき。
大切な人を失ってしまったとき。
とてつもない悲しみに包まれたとき。

こんなとき、大人ならどう考え、
どう振る舞うのだろう。



この方の小説は読んだことなく、
夏目雅子さん、篠ひろ子さんが2番目、3番目の奥様であるという事実のみ知るところ。
きっと男気があって魅力があるのだろうとは思いつつも、もしやの
胡散臭い人なのでは?と、思わずにはいられませんでした。
いつだったか、カッコイイ男として情熱大陸に出ていて、本も売れているとのことで
ちょっと気になりました。
新聞なりで目にしたこの本を借りてみました。 
若者向けであり、オバサン向きに非ズとは思いましたが。 
すごく共感できる部分と、それほどでもない部分、
納得したり、反発したりしながらも
興味深く読みました。 
内容中、ときどき、家人=篠ひろ子さんの言動も出てきたりして、
わりとフランクに書いてるんだと思いました。 
巻末には、夏目雅子さんとの思い出と闘病記録、そのときの赤裸々な
胸中も筆にして、かなり真摯に本音を語っているのでしょうか。
この本とは関係なく、 
オバサンにはなったけど大人にはなったかどうか、と自問する。 きっとダメ。
この本では春夏秋冬の4ツの章に10コンテンツほどの短文からなってます。
  大人の仕事とはなんぞや
  受験エリートに足りないもの
  若さの魅力は打算がないこと
  大人はなぜ酒を飲むのか
  墓参りの作法
  自分さえよければいい人たち 
  大人の身だしなみについて 
                   などなど

おしなべて、謙虚であること、ひけらかすのは恥、でも自分らしくコアをしっかりと
説いているように感じました。 
世代の違う若者が読んだら、どう感じるのかはわかりませんが、 
参考にして欲しい部分も多々ありました。
息子にススメてみようか。
 


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by kimikitak | 2012-05-15 23:20 |

平成猿蟹合戦図

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新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、
すべての始まりだった。
長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、
冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、
韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、
秋田県大館に一人住む老婆…心優しき八人の主人公が、
少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える
“戦い”に挑んでゆく。
希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説



新聞の日曜日の書評は楽しみのひとつ。 
読書委員の小泉今日子
鎌倉古民家ドラマも終わり、しばらくぶりの
小泉書評、きょうは『きなりの雲』石田千著。 
いつも思う、彼女はとても書評が上手!女優で読書家、まっすぐで
読みやすい文章は、読む気にさせます。 
というわけで、この『平成猿蟹合戦図』もだいぶ前だけど
小泉書評を読んで、リクエストを出したのでした。
私は書評は書けないので、一言でいうと、まずまずのおもしろさでした。 
三幕からなるこの話、最初は「悪人」のように、どんどん暗い方向に行くのかと
心を痛め、八方塞がりにドキドキし、これは収束させられないのでは?という
懸念も三幕目は丸くまとめて落着。 吉田修一がおとぎ話と
言ってるように、途中からメルヘンぽさを感じ、悪人のようなハラハラ感は
消えてしまいました。
歌舞伎町という夜の街の底知れない不健康さと対照的な秋田大館市という
牧歌的な風景が、登場人物たちを明るく変化させていく様子が爽やかでした。 
秋田弁の表現が、また和みます。「...だびょん」というのは、よく使われるのでしょうか。
よく出てきました。 
登場人物は、どの人も素敵に変化していきますが、
なかでも秋田の96歳のサワおばあちゃんは、魅力的で、
このサワさんを、最後に悲しませないで欲しいと願いました。 
数々の興味のツボがちりばめられていて...たとえば、不正政治資金疑惑の
代議士先生はあの人かな?とか、渋谷から少し離れたところにある70年代
活躍した歌手のもちものだった一軒家の歌手とはあの人かな?などなど、
ところどころリアルでそそられ、楽しんで読んだのは確かです。
夜の歌舞伎町も学習になりました。
まずまずおもしろいというのは、途中から思いもかけない方向へいくのはいいけど
いき過ぎかな~、そんなうまくいくかな~とひねくれて読んだからです。
でも、
この話も映画になってもよいかと思いました。   
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by kimikitak | 2012-05-06 23:28 |

ばんば憑き

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湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。
不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、
五十年前の忌まわしい出来事だった…。
表題作「ばんば憑き」のほか、
『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、
『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、
宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。



アリスさんのレビューを見て、図書館にリクエスト。
妖怪というかもののけの話でしょうか。
しかもお江戸、どの話も、深いワケが潜んでいて、知りたくて
読み進まずにいられません。 
最初の『坊主の壺』
江戸の町に疫病、コロリが発生。おすくい小屋を立てて、人々を助ける商人重蔵。 
これは、コレラなんでしょうが、人がバタバタと死んでいく。
江戸の風物が目に浮かぶような描写にまず惹かれます。
掛け軸の壺の聖なる不思議な力、最後に謎があかされ、息がぬけない。
主人公、玉の輿のおつぎの強さ・あたたかさが魅力的。
この話、好きでした。
『お文の影』も好きでした。 
咎なくして死んだ幼子。これは現代にも通じる折檻。 
コンビュータ頭脳のおでこの活躍、そのキャラクターが魅力。 
読み応えがあって頭に残りそうなのが『討債鬼』
ハマりやすい私は、すぐさま与太話を持ちかける坊主、行然坊を
憎き嘘ワル坊主と決めつけましたが、深考塾の子供ら三人組の活躍で変わっていく
成り行きで、キャラクターも明らかに。 
そうでした、何事も、決めつけてはいけないのでした。 
この子どもらは、〈あんじゅう〉にも出てくるらしいので、読みたいです。
表題作の『ばんば憑き』立場の弱い婿、佐一郎とわがままな妻志津。
そのわがままっぷりがひどく、憎たらしい娘であることが判明。
老女との一夜で、将来がみえてきた佐一郎。 
かわいそうに。ばんばとは、強い恨みの念を抱いた亡者。
ばんばの生きてきた過去は強烈でした。 
最後の『野槌の墓』も印象的。
もののけに心があったらいけませんか?というお玉さん=化け猫。
人間のおぞましさが描かれてます。 
そうそう『博打眼』もありました。 
人が生贄になってできた博打眼
博打眼から人を助ける狛犬。
博打打ちを戒めているのかな? 
おもしろいです。 
どの話も内容が濃く人の世の業がよく現れていて、現代にも通じる教訓も潜んでいるような、
いい話でした。 
宮部みゆきを多くの方が絶賛するのもわかりました。
私自身は「理由」以来あまり読む気がしなかったのですが、この先は
読んでみようかな。 
読ませる文章、量産できるのはあふれる才能なのでしょうね。
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by kimikitak | 2012-04-28 11:04 |

花宵道中

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男に夢を見させるためだけに、生きておりんす。
叶わぬ恋を胸に秘め、抱いて抱かれる遊女たち。
驚愕のデビュー作。R-18文学賞大賞受賞。

どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。
誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。
あの日、あんたに逢うまでは――初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、
思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、
美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……儚く残酷な宿命の中で、
自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、
官能純愛絵巻。R-18文学賞受賞作。



アリスさんのレビューで知った憧憬カトマンズが読みやすくおもしろかったので、
引き続きこちらを読みました。
過去作品なので、すぐに図書館からきましたが、長待ちしていたものと重なって
しまい、焦りつつ読了。
第5回女による女のためのR-18文学賞受賞
このような賞があるとは知りませんでしたが、あえて手に取るには
いささか歳をとりすぎてしまったかと思ったのですが、心に沁みる作品でした。 
短編連作形式で、人物が他の章へと絡んでいき、人間関係がかなり複雑で、
あ~、こう繋がるのか、と納得しながら読むのでちょっと大変。
吉原にも格というものがあって、この話は、’総籬をもたない小見世、張見世に半籬があるぶん
小格子までは落ちないが、お茶屋の呼び出しだけでやっていけるような上玉揃いでもない’
山田屋の女郎たちの物語。
貧乏な村から売られたり、攫われたりして、年季があけるまで大門から出られない
遊女たち。死なずに生き抜けば大門の外に出られる。
’生きてゆくのは諦めてしまえばそう辛くない’とくくられます。
そんな哀しい遊女たちの話ではあるものの、ありんすことば、吉原を映し出す
表現の数々は、キラキラと美しい。 我々にとっては伝え聞いた世界ゆえ、
その単語にはおびただしくルビがついてますが、とにかくことばが魅力的。
官能部分も多々表現されてましたが、あまり淫猥な感じでもないのは女性のために
女性が書いたからでしょうか。
登場する遊女たち、単にからだを売る女ではなく、プライドを持った
激しくも活き活きとした姿が描かれてます。
江戸遊女、こんなこともあんなことも、すべてを書いてしまおうというような
作者の心意気を感じました。
最後に『私たちの知らない吉原で、恋に泣いて、思いを遂げられないまま
死んでしまった遊女たちの魂が、少しでも慰められることを願います』とは著者のことば。
遊女の魂を考えると少し放心しますが、選考委員の角田光代さんも 
『読み手の内に色彩を残すというのは、並大抵のことではない。文句なしの大賞受賞』と
絶賛されてます。 
そうです、色彩を残すのでした。 

さてこれを返したら、次も次もきてる、大変。 
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by kimikitak | 2012-04-22 10:35 |