カテゴリ:本( 153 )

銀翼のイカロス

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半沢直樹シリーズ第4弾、今度の相手は巨大権力!
新たな敵にも倍返し!!

頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、
500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。
政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い
――プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?


図書館からのレンタルを姉からまわしてもらい、
新作をいち早く読めました。
半沢直樹シリーズ、テレビのおかげでキャストのあの人、
この人の顔がちらちら。
今回は、政権交代とJAL再生がモチーフ。 
ゆえに、登場人物が現実では誰かも思い浮かべたり、検索しつつ、
ああ、あのときの…などと納得しながら読み進むのは面白かったです。 
悪人は銀行内部も政治家もどこまでも悪く、浅はかで私利私欲のかたまり。
いつものように半沢が最後は成敗してくれると思うと、安心して楽しめる
夏のエンタメでした。
実際にこんな人がいるの?というほどの誇大表現はいつものことですが、
だからこそ、どんどん先を読みたくなるのでしょうか。
また、テレビドラマになったらと思うと楽しみがまた増えますが、
いつのことでしょう? 
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by kimikitak | 2014-08-22 06:01 |

庭の桜、隣の犬

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夫婦が暮らす どこでもない場所

夫婦って、家族ってなんだろう?
愛でも嫉妬でもない、なにかもっと厄介なものをど真ん中に抱えて、
私たちはどこへ向かうのだろう? 
3LDK35年ローン、郊外のマンションに暮らす30代夫婦の生活を揺らす、
さざ波のような出来事を通して、現代の家族のあてどない姿を
リアルに描いた傑作長篇小説。



記憶系の天才少女だった房子。 
駅名とか、国旗とか、やたら覚えている少女だった頃、テレビに出て
もてはやされた過去がある。 
上海ツアーで知り合った宗ニと房子、しれっとした夫婦で
熱い思いを抱くでもなく、おもしろ楽しく暮らすわけでもなく、 
現代の30代夫婦、我々とはギャップがあるにしても、なかなか理解しにくい二人。 
どこにでもいる夫婦とは言いがたい、子どももいなくて、何を目標にするでもなく
あてどない二人。 きっと友だちになるのは難しいタイプ。
角田光代らしいといえばいえる、ちょっとひねった会話や、客観的視点、
とにかく活き活きしてないような感じに好感が持ちにくいので、少々読むには難儀でした。 
仕事場近くに小さな部屋を借りるという夫に、複雑な思いの房子。 
宗ニの母が、どこか田舎から上京、第二の人生を歩もうと 
お見合いパーティに参加するといった、ビッグなできごとに翻弄される。 
宗ニ母、苦労人のようで、言動も少々ガサツ。この手の言葉遣いには
ひいてしまいそう。 
房子との掛け合いもおもしろいものの、相容れないままの様子。 
そんな雰囲気をうまく描いているのはさすがですが、なんだか
やる気ない房子に、イラッとします。 
思えば、登場人物全般に、好感度の高い人物がいなくて、読みつつ
イラッとすることが多かったかも。 
部屋を借りたがゆえ、会社のバイトのキテレツな女と浮気まがいに陥る宗ニ、 
そのキッパリしない様子にも腹立たしさが… 
ひょっとすると、イラッとわざとさせる?角田先生の狙いかな?と
思えるほど。 
う~ン、殺人事件読んでたほうがスッキリするかな? なんて思っちゃいました。 
オシャレな言い回しとか、とっても凝ってる文章だと思うのですが、
成り行きもミステリアスだったりもしますが、どうもなんだかな~と思いつつ
とうとう最後まで読みました。  
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by kimikitak | 2014-05-28 21:09 |

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暴力はやってくるのではない。帰ってくるのだ。
理不尽をかいくぐり生きのびた魂に、安息は訪れるのか。
三浦しをん、渾身の最新長編。
天災ですべてを失った中学生の信之。
共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。
二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。
あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。



桜の季節、皇居の乾門の前に並びながら、往復電車で読了。 
春のいい季節の中、またしても重苦しく激しいものを、それでも三浦しをんと思えばこそ
終着点までどっぷりとつかりました。 
まずはこの天災ですが、島を襲った津波なのです。 
そこで、発刊はいつか確かめたら2008年。  
あの津波よりも前に、こんなリアルな津波を描いてたことに驚きました。
中学生とはいえ、島という閉鎖的な環境で育つ主人公たち、少々おとなびているというか
ませた子ども。 
信之と美花は親密につきあっていて、へばりつくようについてくる輔(タスク)は、
父親から果てしない暴力を受けている。 
それがわかっていても周囲は、救うことなく見放している。 
信之は自分のそばを離れない輔を疎ましく思っている。  
そんな3人と生き残らなくてもいいのでは?の暴力父親や、美花に執着する
余所者のカメラマンなど、この先を暗示させる面々が生き残った。 
そこで起こった事件、その秘密をかかえたまま
舞台は20年後。 信之は家庭を持ち、娘も生まれる。 
美花はその美しさゆえに女優として活躍している。  
いつまでも美花への愛を全うしようとする信之。    
二人の秘密を知っている輔の影。信之の妻南海子と輔の歪んだ関係。 
輔の前にまたしてもあらわれる暴力父親。 
島でからんだ糸が、暴力と愛で、不穏な様相を呈していくのですが、 
後半はかなりハード!  
終わりに再生があるのかといえば、そういうわけでもなく... 
この先も果てしなく続く人生が残されている。  
光というタイトルは、何を意味しているのか、最後に感じることになるのですが、
なかなか複雑な思いになるお話でした。 
でも、読ませるしをん先生、実に多岐にわたるテーマにとりくまれるのだな、と
だからこそ小説家ってすごいプロなのだと、あらためて感じました。
映像化してもよさそうな作品でもあります。
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by kimikitak | 2014-05-10 18:00 |

ラブレス

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謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた――。
彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。
道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、
やがては旅芸人一座に飛び込んだ。
一方、妹の里実は道東に残り、理容師の道を歩み始めた……。
流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして
、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。


馬鹿にしたければ笑えばいい。
あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。
電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。
昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。
「歌」が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながら―。
他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」。
「愛」に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?
今年の小説界、最高の収穫。書き下ろし長編


読んだのは、もうかなり前、ホテルローヤルは読んでないまま、
こちらを文庫で読みました。 友だちが貸してくれたので。 
登場人物の関係が最初頭に入らず、その上、舞台があちこちに飛ぶので
前に戻って読み返したりしながらついていくのに慣れた頃、
その先がどうなる?気になる展開にようやく引き込まれ、最後まで。 
それにしても、暗く、重く、もりだくさんの不幸なできごとが用意されていて、
息苦しくなるようでした。 
巻頭の部分、死に際には、年齢以上におそろしく老婆のようになった百合江、
凄絶な人生を予想させるものだったので覚悟はありましたが、まさに
波乱に満ちた、幸せが向こうから舞い込んでくることもなく、あてどなく、
それでも強く諦めることもなく、自分の人生を受け入れて前を見るたくましさに
感じ入り、生半可でない生き様に圧倒されました。 
旅芸人、流しの歌手、旅館の女中、得意の洋裁、など特技が身を助けつつも
であう男すべてが、不甲斐なく、愚かだったりで、本当に運のない女性なのですが、 
そうした中にもいつも自ら希望を見出す姿にほろりとします。
一方、妹の理恵、こちらも、一筋縄ではいかない人生を強いられてます。
また、二人の母親もまた、北海道の開拓村で、どうしようもない夫のもと 
人格を失ってしまうような人生を。 
たくましい女、あられもない男。 そんな対比も味わいつつ、かなりの読み応えを
感じました。 
フィナーレはなかなか、思いがけないもので、全体としておもしろく仕上がっている
と思いました。 
他の著作も読んでみてもいいかなと思いました。
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by kimikitak | 2014-05-08 10:58 |

白愁のとき

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五十二歳という働き盛りの造園設計家恵門を突然襲った記憶の空白。
私が失われていく!! 
自分の人格が崩壊していくというアルツハイマー病の告知を受けた男の
絶望と救済を描いた力作

造園設計家・恵門は、記憶の中にぽっかりと空白があるのに気付いた。
大事な会議で、使い慣れた用語がどうしても思い出せない経験もした。
ひょっとしてアルツハイマー病か?医師の判断を仰ごうと決心し、
身がすくむほどの不安を感じる。自分は本当に真実が聞きたいのか?
もし宣告されたら、この先の人生は?とてつもない恐怖に直面する患者の気持が、
読む者の心を打つ衝撃作。



以前、荻原浩 『明日の記憶』で同じテーマの作品に出会い、映画は渡辺謙、樋口可南子で
見た記憶がありますが、こちらはミステリー作家夏樹静子の作品 
友人が貸してくれたので…明日は次の人にまわすので、感想書いてます。 
『明日の記憶』も衝撃的だったけれど、あのときは自分がまだ少々若かった分
客観的に見てたような。
横山秀夫の『半落ち』もこのテーマだったか?と。 
最近、「あれ」が多くなってきて、我が身に置き換え、怖くなりながら
読みました。 
主人公の造園設計家・恵門は、使い慣れたことばが突然でてこなくなり、亡くなった叔母の症状を
思い起こし、医師をたずねるが、身のすくむような恐怖を覚える。 
なんと、残酷な... 
巻末に理研のアルツハイマー病研究のチームリーダーの方の解説があります。
平成16年の時点での解説ですが、家族性・若年性アルツハイマーの遺伝子はつきとめられています。
この10年で、この病気に対する薬もだいぶ変化してるであろうし、なんたら夢の細胞もできれば、
進行も防げるのかもしれません。 
著者もかなり研究したと思われますが、徐々にあられもないことが起こっていく様子を
リアルに描いてます。
この話の主人公は、自らの今後を 「精神余命」として、苦しみます。
また妻も、得体のしれない恐怖を覚えつつ、支えなければと葛藤、 
また、父親として、息子にも将来を見据えてひとつの重い頼み事をします。 
そんな中、美人デザイナーの桐乃がありのままの自分を受け入れてくれることで
希望がわき、故郷での仕事につながっていくという、ロマンスも挿入されて
少々、気分もそれますが、いずれにしても 重いテーマでした。 

さて、タイムリーにもテレビで 認知症の原因と予防をみました。
脳内でのβアミロイドの増大がこの病気の原因で、これをたまりにくくしなければいけないようです。 
たまりやすい原因 
  糖尿病 脂質異常 ストレス 寝不足  高血圧 歯周病 視力・聴力の低下 等
予防としては
  運動 (こまめにからだを動かす たとえば雑巾がけなども)
  食べ物  野菜・果物 ポリフェノール 青魚
  社会的接触 (脳に刺激を与える)   

まあ、当たり前のことばかり、検索すればもっと教えてもらえましょうが、 
日常生活のあり方が大切なのは確か。
ニュースで、認知症の男性が踏切に入って亡くなり、電車をとめた責任の裁判で
介護責任のある高齢の妻に 過失責任で賠償金を支払うことが決まったとあり、
驚きましたが、とにかく心身の健康に気を遣わなければと思います。 
 
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by kimikitak | 2014-04-28 00:06 |

電車で読む本

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子供ができないまま六年目を迎えた結婚生活に、すれ違いを覚える洋一と映子。
やがて二人は、互いに異なる人へ想いを寄せ始めていく。
婚外恋愛の甘さと苦さが胸にせまる、大人のための恋愛小説。

やさしい夫に愛されている女はいくらでもいる。
けれども夫以外の男から、激しく思慕されている女が、いったい何人いるだろうか―。
ワイン工場と葡萄園を経営する夫と、平凡な生活を送る映子。
だが、子どもができないことへの負い目から、二人の心は少しずつすれ違っていく。
やがて、互いに異なる相手へ想いを寄せ始めるが…。
結婚の苦さと婚外恋愛の甘さを描く、大人のための恋愛小説。


友達が電車用にまわしてくれた、読みやすい本。 
真理子先生の出身地、山梨が舞台。 
1998年の作品なので、微妙に過去ですが、私の若い頃よりずっと感覚は新しいはず。
林真理子の中・高時代のモデルもあるのかもと思いながら読み進みましたが、
なんといっても、あそこもここもどこもかしこも、みんなちょっと繋がってる
いなかの閉塞感に逃げ出したくなりそうな空気が全編を通じて流れてました。 
方言で会話も書かれているので、よけいに地元の感覚があらわで、
真理子さんは、かの土地から脱出したかったのだろうと想像しました。
いつの時代も不倫はあるものの、その時代その時代によって重さも
代償も違うと思いますが、必ず責任は誰かがとらなくてはいけないのが世の常。
この話も、そう軽くなくて、意外に内容はシビアで、なかなかにドキドキさせられるものが
あり、するすると読みました。 
問題を含みつつ、再生方向にいく結末は救いがありました。 


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優しい夫に真っ白でふわふわな猫―美由紀の満ち足りた生活は、
夫の溺死によりピリオドが打たれる。しかしそれは、
新たなる絶望への幕開けに過ぎなかった。
小説推理新人賞受賞作「隣人」を含む戦慄のサスペンス集。
予測のつかない結末6篇!


永井するみ… 初めて目にしました。 が、既に亡くなられた作家さんなのでした。 
表題作の隣人、この隣人というタイトルは、すでに映画やドラマに
恐いストーリーがいろいろあったと思い返し、タイトルと装丁だけでも不気味な様相を
感じました。 
他の作品も、心の叫びというか、人の心に潜む暗いどろどろしたものが
積み重なって爆発する、最後には想像をはるかに超えた結末が待っていると
いった感じで、先が知りたくなる短編でした。
人の内面の表現もうまく、見た目だけでは絶対にわからない人の奥底を見せられた
ようでした。  
ミステリーなので極端ですが、普通の人の生活の中にも、なにかしら似通ったことが
おこってるのだろうと思えます。 
おもしろかったので、長編も読んでみたいところで。
 
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by kimikitak | 2014-03-21 21:01 |

天に堕ちる

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出張ホストを買う孤独な女・りつ子。
自殺願望のある風俗嬢・茉莉。
八人の女と同居する中年男性に安らぎを求める加世子。
アイドルのおっかけに夢中の高校生・奈々美。
女になりすましてメールを書く淋しい青年・光。
息子を溺愛する有名女優・黎子
―彼らが求めたものとは?欲しかったのは、当たり前の幸せだった。
「幸福」にも「愛」にも、色んな貌がある。
10篇の天国と地獄の物語



お出かけ電車で読むのにちょうどいいと友だちが進呈してくれました。
先が知りたくなるストーリーは、集中しやすく、すぐ読めてしまいます。 
どの話も、最後にはオチが用意されていて、なるほど~と
ちょっとため息ものの結末でした。 
その中に、日常に潜む孤独がひしひしと伝わってきて、ちょっと背筋も寒くなります。
普通の当たり前の幸せを手にいれるのが、いかに困難か、
昭和の時代より厳しい昨今を感じます。 
文庫の特典、最後の解説が、また素晴らしく、”自分から逸脱の道を選ぶ女性”
と、この主人公たちを表現してますが、一歩ずれれば、誰もがそんな道に入り込んで
しまいそうな現代社会。 
そのあやうさが、これらのストーリーの原点でしょうか。
解説では、18世紀のセアラ・フィールディングという女性作家が引き合いに出されていて
それが、興味深い内容で(書くと長くなるので頭の中にだけ)
あぁ、解説とは、こういう派生があってこそ、解説らしいのだなと、
妙に納得しました。 
あげくは、そのあとに触れられた、セアラの兄のヘンリー・フィールディングの
『トム・ジョーンズ』という小説、読んでみたくなりました。 
このセアラのあとの時代がジェーン・オースティン。 
高慢と偏見、映画となったの見損なったので録画したのを見るのが楽しみ。 
というわけで、1冊の本から、あれこれ思うのでした。
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by kimikitak | 2014-01-14 19:49 |

夜叉桜

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江戸の町で女が次々と殺された。
北定町廻り同心の木暮信次郎は、被害者が挿していた簪が
小間物問屋主人・清之介の「遠野屋」で売られていたことを知る。
因縁ある二人が再び交差したとき、事件の真相とともに
女たちの哀しすぎる過去が浮かび上がった。
生きることの辛さ、人間の怖ろしさと同時に、
人の深い愛を『バッテリー』の著者が満を持して描いたシリーズ第二作。


前作の弥勒の月に続き二作目ともなると、
登場人物のキャラクターも、より自分なりに捉えられるようになって、
主人公3人に、親近感と魅力を感じるようになりました。 
ことに信次郎は、前作では粗暴な気なしに感じることも多々あったのに、
今回は、事件解決能力を発揮しつつも、人の心をそっと慮ることのできるいいヤツと
感じられるようになりました。  
さてそうなると、この信次郎に誰をキャスティングするか、いろいろ思い巡らせたりが
楽しみのひとつ。 
剣の使い手として凄腕をもつ遠野屋清之助、父親の刷り込みによって人を殺めることを
疑問なく暮らした過去は完全に払拭され、商人として市井に生きることに生涯を
かける姿が、潔くかっこよく、これはまた、かなりの端正なスッキリ美男子でないと映像にはなって
ほしくないな~と思いつつ、進みました。 
前作より、読みこなしやすく、江戸の風物にもすっかり入り込めるほどなじめました。 
もう一人の主人公伊佐治は、今回も、信次郎を何かにつけ、敬愛しつつも諫める役どころ、
家族にも恵まれた初老の男性、この人あってこそ信次郎のキャラが活きてくるのです。
年かさの人として言う、しみじみとした人生訓も、なかなか。  
と、熱く思い述べましたが、話は、物哀しい女郎連続殺人。 
昔の厳しい時代の悲哀が、心に迫ります。 
ミステリーなので、偶然や、こじつけはやはりないわけではありませんが、 
この話は、事件解決よりも人の心の動きを感じ味わうことの方がおもしろいのです。 
さりとて、事件犯人の意外な動機も見逃せず、ミステリーとしてもシッカリとしててよかったと思いました。
私の感想はこんなところですが、解説が三浦しをん先生ともなると、作品がまた数割りアップ。 
さすが作家先生。
どうか幸せになってほしい、信次郎も清之助も伊佐治親分も、架空の人物のはずなのに、
本気で願ってしまう。これも、夜叉桜が胆力を秘めた物語だからこそだ。
ひとがひとであるかぎり孤独からはのがれられない。運命と意思の狭間でもがくしかない。
だが、孤独を越えて結びつきあい、希望を見いだすことができるのも人なのだ。
すべての登場人物の生と死が、私たちの行く道をほのかに照らしている。

と、〆はこうなるのです。 
本当に、そう! そう思いつつ、今一度読み返したいなと思います。
 
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by kimikitak | 2013-12-15 19:18 |

弥勒の月

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小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの水死体が発見された。
同心・木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人・清之助の眼差しに違和感を覚える。
ただの飛び込み、と思われた事件だったが、清之助に関心を覚えた信次郎は
岡っ引・伊佐治とともに、事件を追い始める……。
“闇”と“乾き”しか知らぬ男たちが、救済の先に見たものとは? 哀感溢れる時代小説!
 

初めて読むあさのあつこ、しかも時代小説。 
姉がこの続編 『夜叉桜』をおばに薦め、いたく感動した叔母が私に薦め、
それならと、まずはシリーズの最初から。 
3冊目の『木練柿』まで、いいらしい。 
叔母に至っては、素晴らしいと感動して、何度も繰り返し読み返してるとのこと。 
それもわかる気がする。 
文章表現が素晴らしいのもわかるけど、時代物、ことばも現代とは違うし、人物、設定等
少々、頭をはたらかせないと、なかなかつながらないので、そうは簡単に読めないのでした。 
何が素晴らしいかって、江戸の情景が目に浮かぶような、表現力! 
その表現を切り取って使ってみたくなるような、文章力だ。 
話は、おりんの入水に始まって次々におこる殺人、事件を解決しようとする同心と岡っ引きの
活躍するミステリー。 そこにさらに、おりんの夫、遠野屋主人の謎・闇の解明。
解説は今は亡き児玉清で、この解説がまたとても素晴らしい。
ろくでもない感想しか書かない私が素晴らしいと絶賛したところで埒もないですが…
物語の面白さにぐいぐいと心を傾けながら、読者は、作者の投げかける人生への
深い洞察に満ちたことばの数々に暫し呆然と立ち止まるほどの衝撃を受けることになる

っというようなぐあいで、読むスタンスも違うのでしょうが、本文を読む前にこの解説を読めば
わくわく感はいやが上にも高まり、読後に読めば、より深い感動になるかもしれない。 
私はといえば、途中でがまんできずに読んで、感動の幅も広がったような気がします。  
夜叉桜の解説は三浦しをんで、叔母に言わせると、その解説は更にもっと素晴らしいのだそうです。
この本は手元にないので、読むのはまだ先ですが、こちらの方がもっとおもしろいみたいです。
主人公たち、もしもドラマになるなら配役は?なんて勝手に考えたりしましたが、
3人ともかっこ良いので、それなりの人でないと。
夜叉桜を読んだら、勝手に配役してみよう。 
何度も読んでるという叔母の意見も聞いてみよう。
まあ、そんな楽しみも思いつくような、おもいがけない感動ものの1冊でした。 
あ~、ドライアイになってきた。老眼も進み、 
本もパソコンも、新聞も書道も辛いこの頃であります。

 

  
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by kimikitak | 2013-10-15 22:20 |

55歳からのハローライフ

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人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。「結婚相談所」
生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない。「空を飛ぶ夢をもう一度」
お前には、会社時代の力関係が染みついてるんだよ。「キャンピングカー」
夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしてると思ってるんだ。「ペットロス」
人を、運ぶ。人を、助けながら、運ぶ。何度も、何度も、そう繰り返した。「トラベルヘルパー」

ごく普通の人々に起こるごく普通な出来ことを、リアルな筆致で描き出した村上龍の新境地


   個人があらわになったとき 家族との絆が必要になる 村上龍

近所のSさんが期限内だからと貸してくれた。
新聞連載の中編連作。
定年後の老いとともに訪れる、生活の難しさ。
まさに、我々の世代の普通の人々の話。
思い当たるふしが、どの話にも潜んでいて身につまされる。
各々、アールグレイ、炭酸水、プーアール茶など、飲み物が心を
落ち着かせるてだてとしてでてきて、おいしそうだ。
・結婚相談所
・空を飛ぶ夢をもう一度
・キャンピングカー
・ペットロス
・トラベルヘルパー

結婚相談所に登場する男たちのありそうな風体やらクセに、中高年の
再婚の難しさを実感。 
やはり離婚してる場合じゃない^^
でも、この話の主婦は熟年離婚を果たし、夫側からの未練に心揺れつつも
ひとりで生きていく道を選ぶプロセスになっとく。
キャンピングカーは、定年後、妻との時間の誤差にようやく気づき心のバランスを崩していく夫、
妻は自分の時間を既に大切にしていて、夫のはいるすきはわずかしかない。 
ペットロスは印象的で、夫婦の会話の行き違いに思わずニンマリしてしまう。
この話がいちばん心に残るかな?痛々しいまでにリアル。
夫のつっけんどんなもの言いにいつも傷ついていた妻。
自分の存在価値を疑問に思う上、
よその奥さんばかり褒めて、人様には愛想もいい夫。
子育てが終わって、そんな夫に希望を見いだせない妻は犬を飼う。 
やがてその犬を失うときが来る。
そこで初めて分かり合えそうな夫婦。
そんな心の機微がうまく表現されて、共感出来ました。
 
『実際に、自分で人生のすべてを選択できる人なんていない』という結婚相談員のことばどおり、
普通の人々は選択肢が限られた中でがんばって生きていくしかないのです。 
今までに前例のない難しい時代に突入している我が国。 
親の世代を真似してても、まっとうには生きていけない。
そんな生きづらさを踏まえて、各々のストーリーに思わずドキッとするのでした。

村上龍は、『半島を出よ!』 以来。 あの話は独創的、強烈でスゴイと思ったけれど、
この話は普通のシニアの生きづらさを描いていて、思わずため息が出てしまいました。
村上龍ご自身は、普通の人ではないのに、よくリサーチした結果の本書だと思います。
女性の心情が、よくわかってるところがさすがと思いました。 
小池栄子とともにでてる対談番組でも、イヤミなく個性を発揮してると思ってみてましたが、
限りなく透明に近いブルー以来、すごく好きな作品’半島を出よ’ に続き、
ファンとなってます。
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by kimikitak | 2013-09-12 20:09 |