長いお別れ

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帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、
十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、
娘が三人。孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”
といわれる認知症。
ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、
迷子になって遊園地へまよいこむ、
入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--
日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、
終末のひとつの幸福が描き出される。
著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。


2010年 「小さいおうち」で直木賞を受賞した著者の最近の作品。
予約待ちが長いわよ、と借りた姉が回してくれたので、
急いで読んだ。 テーマは重いものの、爽やかにユーモラスに描かれてるので
あっという間に読めます。
8篇からなる連作集で、認知帳を発症した父親の介護の日々を中心に
東家の家族たちの10年間が描かれてます。
 ・全地球測位システム
   12月の父親の誕生日に娘を集める母
 ・私の心はサンフランシスコに
   サンフランシスコに暮らす長女のもとへいく老夫婦。 
 ・おうちへ帰ろう
   アメリカからしぶしぶ帰国した兄弟と祖父のかけあい 
 ・フレンズ
   お葬式に出席した昇平、かつての同級生とのかみ合わない会話。
     この話がいちばん傑作で大笑い
 ・つながらないものたち 
   大震災がおこり、心配する娘たちとその後の東家 
 ・入れ歯をめぐる冒険 
   昇平の入れ歯がなぜかすぐになくなる 
   ここは介護の大変さがあれこれ。
 ・うつぶせ網膜剥離
   介護をしていた母曜子が、網膜剥離を発症。 
   網膜剥離の手術後は下を向いていないといけないそうで、
   夫の介護にはやく帰りたい曜子が必死でうつぶせにしている姿が
   健気
 ・QOL 介護施設 
   介護施設を探す娘たち 

全体を通して、介護をする母親の曜子が、困難な日々にもめげずに 
夫の介護を自分の力であきらめることなく、なしとげようとする姿が、とても優しく、立派。
また、娘たちも、そんな両親を遠くに離れていてもあたたかく励ましたり手伝ったり、 
とてもまっとうな家族の姿だなと思いました。
10年とは長い日々。少しずつ変化していく元校長先生の日々も
長かったことでしょう。 
読後感は爽やか!  
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by kimikitak | 2015-10-04 10:12 |
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