夜叉桜

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江戸の町で女が次々と殺された。
北定町廻り同心の木暮信次郎は、被害者が挿していた簪が
小間物問屋主人・清之介の「遠野屋」で売られていたことを知る。
因縁ある二人が再び交差したとき、事件の真相とともに
女たちの哀しすぎる過去が浮かび上がった。
生きることの辛さ、人間の怖ろしさと同時に、
人の深い愛を『バッテリー』の著者が満を持して描いたシリーズ第二作。


前作の弥勒の月に続き二作目ともなると、
登場人物のキャラクターも、より自分なりに捉えられるようになって、
主人公3人に、親近感と魅力を感じるようになりました。 
ことに信次郎は、前作では粗暴な気なしに感じることも多々あったのに、
今回は、事件解決能力を発揮しつつも、人の心をそっと慮ることのできるいいヤツと
感じられるようになりました。  
さてそうなると、この信次郎に誰をキャスティングするか、いろいろ思い巡らせたりが
楽しみのひとつ。 
剣の使い手として凄腕をもつ遠野屋清之助、父親の刷り込みによって人を殺めることを
疑問なく暮らした過去は完全に払拭され、商人として市井に生きることに生涯を
かける姿が、潔くかっこよく、これはまた、かなりの端正なスッキリ美男子でないと映像にはなって
ほしくないな~と思いつつ、進みました。 
前作より、読みこなしやすく、江戸の風物にもすっかり入り込めるほどなじめました。 
もう一人の主人公伊佐治は、今回も、信次郎を何かにつけ、敬愛しつつも諫める役どころ、
家族にも恵まれた初老の男性、この人あってこそ信次郎のキャラが活きてくるのです。
年かさの人として言う、しみじみとした人生訓も、なかなか。  
と、熱く思い述べましたが、話は、物哀しい女郎連続殺人。 
昔の厳しい時代の悲哀が、心に迫ります。 
ミステリーなので、偶然や、こじつけはやはりないわけではありませんが、 
この話は、事件解決よりも人の心の動きを感じ味わうことの方がおもしろいのです。 
さりとて、事件犯人の意外な動機も見逃せず、ミステリーとしてもシッカリとしててよかったと思いました。
私の感想はこんなところですが、解説が三浦しをん先生ともなると、作品がまた数割りアップ。 
さすが作家先生。
どうか幸せになってほしい、信次郎も清之助も伊佐治親分も、架空の人物のはずなのに、
本気で願ってしまう。これも、夜叉桜が胆力を秘めた物語だからこそだ。
ひとがひとであるかぎり孤独からはのがれられない。運命と意思の狭間でもがくしかない。
だが、孤独を越えて結びつきあい、希望を見いだすことができるのも人なのだ。
すべての登場人物の生と死が、私たちの行く道をほのかに照らしている。

と、〆はこうなるのです。 
本当に、そう! そう思いつつ、今一度読み返したいなと思います。
 
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by kimikitak | 2013-12-15 19:18 |
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