パンとスープとネコ日和

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【解説】 母を亡くした50歳のアキコは、編集の仕事を辞めて調理師免許を取り、
実家の食堂を継ぐことに。サンドイッチとスープ、サラダ、
小さなフルーツというシンプルなメニュー。
食材にこだわり、いろんな評判に揉まれながらも誇りを持って働き続けていた。
そんなある日、生まれて一度も会ったことのなかった
亡き父親の話を聞くことになった彼女は、
異母兄弟が住む町まで出向くことになり…。
働く女性の幸せとは何か? しみじみと考えさせられる長編小説。


姉からまわってきたので、読んでみた群ようこ。
出自を知らされたのは中学生のとき、というアキコ。 複雑な家庭事情の娘という周囲の目、
ときに母を反面教師としながらも、賢く育ち、凛として生きていくさま、
わりと大変な状況なのに軽快なタッチの文章で、潔いアキコに惹かれながらトントンと読みました。 
母が営んでいた「お食事処かよ」...学校から帰ると午後の休憩時間に、常連のおじさんたちと
たばこを吸いながら談笑している母。 母にとってアキコは期待の星、好き勝手にアキコに
絡んでくる母を内心疎んじる娘、そんな母娘がいろんなエピソードで綴られて
ふたりのキャラクターの描かれ方が絶妙です。 
母亡き後、母の店と対照的ともいえる
『修道院のように簡素な空間で安心できる食材を使って、おいしいパンとスープの店を出したい』
と、母の店を改装して「ä(エー)」というお店を開店させるアキコ。
このお店は、あの「かもめ食堂」を思い起こさせます。 
パンは全粒粉か天然酵母、無農薬か低農薬の野菜、ベジタリアンやヴィーガンのように
極端に走るのはいやだけど、ヴィーガンに近寄りたいという気持ちは持っていたいという
のがアキコの食事に対する正直な気持ち。 
そんなお店は昔の「かよ」の常連客たちには受け入れられないのも当たり前。 
忙しくて日々の食事にあまりかまっていられない人たちにせめて丁寧な食事を
たまには食べてもらいたいという、スープとボリュームのあるサンドイッチの
美味しそうなこと! 
お店は評判となって、遠方からもナチュラル系のお客さんも来て繁盛するも
様々な横槍もはいることに、でも、こんなお店があったらぜひともランチしたいところです。
アキコの気持ちに添ってくれるアルバイトのしまちゃんとのやりとりも、なかなかいい。 
そして、拾った猫のたろちゃん。 猫のことがいっぱい描かれているだけで嬉しい^^
食べ物を扱う店に猫は厳禁、とばかりに2階に閉じ込めたままの猫。
アキコの仕事が終わるのをひたすら待ってる猫、仕事のあとの猫との時間が心地良さそうでした。
アキコの父親を知ってるという人が現れたり、ドラマティックな内容に展開しますが、
最後はちょっと悲しい、いえいえちょっとじゃなくかなり悲しく、
じわじわと孤独が伝わって来たりもしますが、全体に爽やかで明るく、読み心地の良い
一冊でした。
そう思わせるのは、知的で凛として、それでいて自然体のアキコの人柄でしょうか。 
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by kimikitak | 2012-11-20 17:31 |
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