異国の窓から

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取材先のウィーンのオペラハウスで、著者はいかめしい顔の係員にまくしたてる。
「天井桟敷でも客は客やぞ。天井桟敷の隅で、汚い服を着てるやつのほうが、
ボックス席の金持連中よりも、はるかに深い心でオペラを観るかもしれんやないか」
大阪弁「必殺日本語突き」に、金ボタンの制服を着た係員もすごすごと退散する…。
別れの悲しみは胸に仕舞い、素晴しい人々との出会い、出会い、出会い。
綴られた、ドナウ河の美しき情景に展開する生の歓喜と悲しみ、
それはもう、ファンタスティック。
ヨーロッパ7カ国、そして中国を巡る笑いと涙に充ちた名紀行文。


朝日新聞への連載、そのための取材旅行の顛末は1982年のニュールンベルクから始まる。
ニュールンベルクといえば、裁判の映画を思い出す。 
ネオナチストの青年たちを旅行者として眺めている、そんな地から
南ドイツ、ウイーン、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアと
ドナウを旅する紀行文です。
’ドナウの旅人’を読んでないのでなんともいえないですが、
こちらを読んでからそれを読むのもいいかと思うしかありません。 
宮本輝は、流転の海と、星宿海...しか読んでなくて、
しかも流転の続...最新作まで最近出ているので、どんどん読まないと。
私のおススメ、星宿海への道は、姉に回したら、すごく感動したようで、
そのまた友だちまで大感動だったらしいので、世代的にも宮本輝は
同調できることも多いのかと思います。 
こちらのエッセイは、ご当地情報が楽しめたり、歴史を感じられたり
などの期待だけだったのですが、 
何よりおもしろかったのは、同行の若い女性記者とのやりとり、
行き違い、真っ向勝負と思われる会話、時が経た今みてても
生きてます。 
神経症という持病を抱えながら、発作はおこらないだろうかなどと
心配しながらの旅。 行ったらわかるかな~というなまくらな思いの著者。
「ニュールンベルク、この近所ですか?」と同行の若い女性記者に聞いたら
「今、表示板に書いてあったでしょう。地図をごらんにならなかったのですか?」と
侮蔑の言葉を吐きおった。と自分の小説の取材のために西ドイツから
ルーマニアの果てまで行こうという人間が、そんなことも知らないでやってきたのか、
そういう毒を含んだ言い方である...
ってなところでまずほくそ笑まずに
いられなくなりました。
こんなところから始まり、このあとこの旅はどうなるのだろう?と
こちらまで不安を感じとります。  
大阪弁の輝氏、あっちゃこっちゃで外国人相手に文句いい、大阪弁を吐きまくり、
かたぶつとも思われる大上記者とあちこちでぶつかりながら、最後まで
おもしろい展開が続きました。 
そこに、現地のやとわれガイド、外国人の友人たちなど、コミュニケーションの
おもしろさもいろいろあって、薄い文庫本ながら、内容がたっぷりでした。 
もちろん、あの社会主義の時代、今とは全く違う大変な旅行であったことは
間違いなく、時代を読み取りながら、東欧の今とも比べたくなったりします。  
あとがきとして、その後に思うこともでてますが、
時代が変わった今読んでもおもしろいのは確かでした。
それにしても取材旅行とは、周りのスタッフともども重い荷を背負いつつ、輝氏の心は
解放されるどころではないのだろうと、辛い稼業だな~なんて
読む方は軽い気持ちです。
星宿海も中国の風景がもとになっていて、ご当地のものを
取材しただけで、すごいストーリーになっていくの驚きでいっぱいです。
この取材旅行の集大成のドナウの旅人も、読んでみたいと思います・ 
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by kimikitak | 2011-10-19 19:10 |
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