愉楽の園

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愉楽の園  宮本輝
1989 3月
文藝春秋

熱帯モンスーンの風土と小乗仏教への信仰が巻き込む「虚無の海」に漂う者たちと、
「生死の海」を泳ぎ悪魔とひたすら闘う者たちの赤裸な姿を描き、
心と風土のかかわりをとらえて文芸作品に新しい世界をひらく。
底知れぬ蠱惑のなかに、心と風土のかかわりをとらえる問題の長篇小説。


こないだ、バンコクに行くという友人が、ガイドブックにあったご当地小説のオススメ
にしたがって読んでおもしろかったと言ってたので、読んでみました。 
あとがきによれば、宮本輝氏の真の処女作 『弾道』は、
行ったこともないバンコクを舞台にしたもの、27歳のときに書いた作品で、
その小説は荒唐無稽で出鱈目でひどい文章 … …  
真の処女作を蘇らせようと書いたのが本作とのこと。
『愉楽の園』というタイトルは、プラド美術館に所蔵されている
ボッシュの絵の題からヒントを得ているのだそうです。

けっこうボリュームのある話で、20年前くらいのバンコクでのことと思って
読みましたが、今の時代とは違う未発達なぶん、よけいにエキゾチックで、
本文中に表現されている ’バンコクの魔法’ この国には、なんか
媚薬みたいなものがたちこめている… というくだりからも感じる
ように、不思議なムードの漂った話でした。  
どのぐらいの取材でこういう長編が書けるのか、作家というのは
すごいな~と思います。
登場人物もただものではない人が多いのですが、
その頃のリアルなことなのか、まことしやかなだけなのかは 
わからないけれども、バンコクという街のありとあらゆる側面をもりこんだ感じで、
チャオプラヤ川、入り組んだ運河をイメージしながら、
このじゅうぶんに妖しげな世界を楽しみました。
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by kimikitak | 2010-11-19 20:07 |
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