シャイロックの子どもたち

e0117945_20434657.jpg文春文庫
シャイロックの子供たち
ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。
女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?
“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、
上らない成績…事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。
銀行という組織を通して、普通に働き、
普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。

 アリスさんのところで
ご紹介のあった、池井戸潤(元ミツビシ銀行職員)の著書、
次々、興味深く読んでます。  
近未来的物語のプラチナデータのあとだけに、 
リアルな人間模様が、とりつきやすかったのでした。
誰もがかかわりのある銀行、これは、大田区の商店街、長原支店でのできごと。
どちらかといえばエリートが望む中央からは、かけはなれてしまってる感のある長原。 
一度失敗したら這い上がれない、とか、負け組勝ち組がハッキリと分かれるとか、
カネカネの世界ははかり知れないというイメージを勝手にもってしまってますが、
読めば読むほどに、内部事情もよくわかってしまい、大変な職場。 
短編連作で途中からミステリー、凝った仕立てになっていて、ナゾがナゾを呼び
おもしろく読み進みました。 
各章ごとにでてくる主人公のストーリーは、ちょっと消化不良で終わりながら
次に別のカタチでかかわっていきます。 
高卒乙採用の直情径行型古川副支店長によるパワーハラスメント、
家庭の事情で堅実な愛理にかかる現金盗難のぬれぎぬ、
目標を達成できなくて、叱責をうけたあげく精神に異常をきたす遠藤、
幼い頃から優秀で着実な歩みに満足できず、スリルを求めてギャンブルに狂う黒田
目標を淡々とクリアするヒーロー滝田、
激務の果ての夫を突然失う晴子 
などなど、リアルな人物像が描かれてますが、 
ちょっと特殊な世界かな?とあらためて思います。
心身疲れきって帰ってくるエリートであろう夫を迎える妻も、
出世レースを見守る社宅妻も心穏やかでいるのは辛そうです。 
どこに属していても、ふとしたきっかけで足元を掬われ、
人生の展開が猶予ならざるものになったり、
普通の幸せに身をおくのは本当に大変なこと。 
この話、最終的に、各章と同じく想像を託されます。 
そのもったいぶりが狙うところなのでしょうが、こちらの脳神経はちょっと疲れました。
それほどの量でないわりに読み応えがありました。 
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by kimikitak | 2010-09-22 21:41 |
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