豊島ミホ

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いっそ痛いと思った、その痛みだけは思い出せた。
かっこ悪くて、情けなくて、でも忘れられない瞬間がある。
田んぼと山に囲まれた、コンビニの一軒もない
田舎の県立高校を舞台に綴る、青春の物語。


アリスさんのレビューをみて、豊島ミホなる作家、
興味が湧いて、お初に読んでみました。 
内容が、檸檬のころというタイトルのように、フレッシュな酸っぱさを
もった柑橘系なので、もはや胸がキュンとなることも熱くなることも
切なくなることもなくなった私ではありますが、 
かつての胸キュン時代を思いめぐらしたり(アっ、我々の時代とは
違うのでした)、子ども世代のことを思ってみたりしながら
読みました。 
感性豊かな表現が、新鮮な感じがしました。 
物語は、7つの短編に各々の主人公が連なるようにでてきて
最近に多い手法かとも思えます。 
保健室の常連のサト、司法試験を受け続ける28歳、
すれ違っていく加代子と西、そこにあらわれた富蔵、
恋愛禁止の下宿で異彩をはなつ珠紀
勘違いして失恋の白田、 
大学生になって遠距離になってしまうなど、 
どれも切実な思いが詰まった高校生たちの青春。 
ああ、なんと歳をとってしまったことか、どうしても
ウルッとまではなれなかったのですが、彼らたちの気持ちが
痛いほどにわかり、小石のように世の中に流れていく手前の
挫折や輝きを、久々に味わいました。 
ここにでてくる生徒たちは、進学校に通う、それなりにできのいい子たち。
それゆえの葛藤も深かったかと。
ただ、私の暮らした東京とはまた違うもっと切実なものも
感じ、そこには子どもを送り出す親の心構えも、負担もまた
想像以上、また別世界でした。
さりげない文章、会話、表現がうまいと思いました。 
ナタリー・ウッドと、ウォーレン・ビーティの映画
「草原の輝き」を思い出したりしました。(古ッ) 
かなりなオバさん目線ながら夢中になって読んだ後の
作者のあとがき これが印象的。このあとがきなくしては、
この物語は魅力がうすれたかもしれません。
 私の高校生活は暗くて無様なものでした。 卒業式のとき、もうここに通わなくて
 すむんだという事実に安心してボロボロ泣いたくらいです。… …
 …高校時代の地味生活で会ったたくさんの人のこと、私おぼえてます。

かなり、斜めからみんなのことを見ていたんだろう作者。
決して屈託ない人ではないからこそ、書けたのかもしれません。 
こういう人好きだわ~ 
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by kimikitak | 2010-04-22 19:56 |
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